(前回記事はこちら) 国際収支の定義の第3のポイント「体系的に」について解説する。同時に、国際収支統計の各収支の関係も整理する。もし「経常収支の赤字化が日本国債の金利を上昇させる」のであれば、それは2011年に起きていたはずであることが分かる。実際にはそうなっていないので、この論理はどこかおかしい。 国際収支は複式簿記~すべて足せばゼロになる 国際収支統計の定義で「体系的に記録」とあるのは、「複式簿記」の考え方に沿って記録するという意味だ。企業会計と同じやり方で集計・整理している。ここで注意すべきことが2つある。まず、複式簿記は1つの取り引きを2つの面で捉えるから、すべての項目で金額を合計すると、ゼロになる。国際収支統計は、すべての収支を合計する(ただし、重複しないように合計する)と、ゼロになるのである。 だから、どれかの収支が大幅に赤字を膨らませると、他の収支の黒字が増える調整が必ず働く