それはたいてい、どことなくぱっとしないビルの一階にあって、二十坪ほどの貸店舗になっている。その近所に住んでいる人なら、たいていは、その貸店舗はどんなテナントが入ってもぜったいに繁盛しない、魔の場所であることを知っている。そんな貸店舗が、どの駅前にもひとつはあるものだ。そうした貸店舗の前を通るたびに、なぜこの場所ではいかなる商売も繁盛しないのだろうと、わたしはふしぎな気持ちになってしまう。 今、わたしが住んでいる最寄り駅の近くにも、ぜったいに繁盛しない貸店舗がある。そこはかつて安売り生鮮食品店で、その後ダンス教室になり、現在は美容院である。ほんの二年で、かかる変遷が見られた。そして問題は、その美容院の前をわたしが通りかかったとき、髪を切っている人をほとんど見たことがないという点である。だめなんじゃないか。この貸店舗もまた、負の連鎖から逃れられないのではないか。 かつてわたしが住んでいたところ