カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した本作、脚本はヨルゴス・ランティモス監督とエフティミス・フィリップの共同執筆です。フィリップは『ロブスター』(2016)でも共同脚本を務めるなど、ランティモス作品の世界観に大きな影響を与えた人物の一人と見て間違いありません。 ランティモス作品は、時として理不尽に思えるような掟に従属する人々を繰り返し描いているんだけど、本作は主題理解という点では非常に明確な作品であるといえます。確かに主人公の医師・スティーブン(コリン・ファレル)には罰を受けて然るべき過失があったとはいえ、マーティン(バリー・キオガン)が課した掟は非現実的かつ不条理です。だがその掟は実際に発動し、マーティンの家族は徐々に追い詰められていきます。 追い詰められているとはいえ、どことなく掟を従順に受け入れているかのような家族の振る舞いが、まさに儀礼に供される犠牲であるかのような印象を強めています。