カルト信仰への深入りはなぜ起きるのか。『苦しくて切ないすべての人たちへ』を上梓した禅僧の南直哉さんは「精神的な孤立が当事者の背景にある。意志を奪われた信仰は単なる洗脳である」という――。 【写真を見る】禅僧の南直哉さん ※本稿は、南直哉『苦しくて切ないすべての人たちへ』(新潮新書)の一部を再編集したものです。 ■大学の友人がカルト教団に入信 かなり前のことだが、当時世間を驚愕(きょうがく)させる大事件を起こした宗教団体、いわゆるカルト教団に、友人が入信してしまったという若い女性に会ったことがある。 「私がいけないんです、なのに私だけ無事で……」 会って話し始めた途端に、彼女は泣き出してしまった。 「私が入るはずだったんです……」 上京して大学に入り、最初にできた友人が入信したという。ものの好みも家庭環境も似ていて、彼女と出会い、東京でひとり暮らしをする不安がどれほど軽くなったかわからない。