「親の臑齧り」と謂う輩は何時の世にも悪事の如く猖獗を極めているようで、落語の演目にも「臑齧り」なんて咄があります。 裕福な育ちで器量好しの娘さん。理由は分かりませんが、どうにも結婚の縁がつきません。何度か婿さんを取るものの、三日も居着いた例しがない。一方、身持ちが悪いのか心持ちが薄暗いのか、勘当されて親掛かりから居候の身となった若旦那がおりまして、此方の娘さんとの縁談が舞い込んできます。美人と私産の二人連れに、究竟の条件と飛びつく若旦那。而して其の顛末や如何に。 瀬尾まいこ氏の「その扉をたたく音」を読みました。主人公の宮路は二十九歳。無職の彼は糊口費を親に貰う仕送りで賄っています。仕送りは月二十万円。宮路の無業者期間が七年間とすれば、父君は贈与税も含めて略二千万円を費消した計算になります。でも、大丈夫。宮路の実家は私産家で、父君は市議会議員なのです。 では宮路自身は大丈夫なのでしょうか。「
