- 日本が先の戦争に敗れて半世紀がたとうとしている。半世紀といえば、けっして短い期間ではない。まだ、「戦後五十年」などといっているのか、という声が聞こえそうでもあるが、このように、敗戦後何年、という呼び名がいまにいたるまで生きていることに、意味があるかといえば、わたしはこのことには、意味があると思う。 これはよくいわれることだが、戦後という時間は敗戦国によってこそ濃密に生きられる。米国でいま、戦後といえばヴェトナム戦争以後であり、ヴェトナム戦争はかの国にとっての有史以来はじめての負けいくさだった。 負けいくさが、それ以前とは違う時間を負けた国にもたらすのは、それをきっかけにその国が、いわばぎくしゃくした、ねじれた生き方を強いられるからである。 ヴェトナム戦争の傷には、一つにはその戦争が「正義」を標榜したにもかかわらっず、「義」のない戦争であったことからきている。日本における先の戦争、第二次