過疎と少子化の影響で、都市部より先に人口減少が進む中山間地域。暮らす人がいなくなり、すでに“消滅”してしまった集落があると聞き、昨年暮れに兵庫県西北部の佐用町・若州(わかず)地区を訪ねた。 佐用町を南北に貫く国道373号を車で北上し、岡山との県境にある同地区に着いた。民家十数軒が立ち並び、手入れの行き届いた家も多いが、どこも雨戸や門扉が閉まっている。辺りは怖いほど静まり返っていた。 緩やかな坂を上って集落を奥に進むと、民家の庭先に、ほうきを手にした高齢女性の姿があった。声を掛けると、「年末なので、掃除に帰って来たんです」。民間のバスが3年前に撤退した後、町が走らせている有料の送迎車で来たという。 「育った家なんですよ。不便で町内の別の所に移ったけど、離れがたくて。こうして時々、用事をつくって戻ってくるんです」。柔らかい笑みを浮かべ、女性は家の中に消えた。 女性宅の隣には、大きなかや