『昔と比べ、図面の「価値」が、下がっている気がする。』 それは、長期間、設計事務所を主宰している建築士が、会話の中で発した言葉でした。そして、その根拠として挙げられたのは、手描きの図面とコンピューターによる図面との違いでした。 彼が言うには、図面を手で描いていた時代の方が、クライアントにその図面の「価値」が伝わっていると感じることが多かったと言うのです。 コンピューター普及以前、建築・デザインの現場では、図面は全て手で描かれていました。手描きの線からは、そこに掛けられた膨大な時間や労力が想像しやすく、それを手掛りとして、図面の「価値」が、クライアントにも伝わりやすかったのではないか、というのです。 現在、図面のほぼ全ては、コンピューターを使用して作成されます。そして、完成した図面は、プリンターによって紙に印刷されます。出力された均一な線から、そこに費やされた、時間や労力を想像し、そして「価