巨額紛争 2016年5月、三菱重工業は突如、「日立製作所に南アフリカでの発電所事業にかかわる損失分482億アフリカランド(約3790億円)を請求した」と公表した。日立製作所側は「法的根拠はない」として拒否、両者が真っ向から対立したのだ。 実は、新設されたMHPSが日立製作所から受け継いだ南アフリカ火力発電所事業にかかわるボイラー建設工事がまったく進んでおらず、大幅な納期の遅延という問題を抱え込んでいたのだ。公式にはその理由は、ストライキ等の労務問題だと説明されている。 しかし、当時の南アフリカは、2018年に汚職で失脚するズマ大統領とその取り巻きによる腐敗がはびこっており、少なくとも「賄賂で構築した関係は、賄賂を払わなくなると、ゼロにはもどらずマイナスになる(嫌がらせを受ける)」という悪しき慣行があることは当然視されていた。その観点からは、MHPSの受け継いだ事業の遅延が賄賂と縁を切ったこ