―“Offshore Control”戦略の再考察とシーレーン安全保障への提言― 秋元一峰,海洋政策研究財団海洋グループ主任研究員 1498年、ヴァスコ・ダ・ガマがインド洋に入り、西洋から東洋へのシーレーンが拓かれ、大航海時代が幕を開けた。それにより、ヨーロッパ世界によるアジア世界に対する優位の歴史が始まった。かつての大航海時代には、東洋の産物を西洋に運ぶ海路を提供したユーラシア大陸の東南縁辺に沿って流れるシーレーンは、今、アジアが牽引するグローバルエコノミーを支える物流の大動脈となっている。 そのシーレーンには、船舶の航行を妨げる様々な脅威が潜んでいる。紅海やインド洋そして東南アジアの海には海賊が跋扈し、中東の紛争が有事になれば、ホルムズ海峡の安全を脅かすであろう。中でも、南シナ海における島嶼の領有権や海域の管轄権を巡る国家間の紛争は、それが激化すれば、航行に支障を来たし、世界経済に大混