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ブックマーク / onboumaru.com (30)

  • 業平と芥川の人喰い倉 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 在原業平(ありわらのなりひら)ト申しますト。 ご承知の通り、色男の総元締めみたいな嫌な奴で。 生まれは高貴にして、容姿は眉目秀麗であるばかりか。 美女に目がなく、狙った獲物は必ず手に入れるトいう。 天照大神に仕える伊勢斎宮でさえも。 神前にて潔斎中の身でありながら。 コロッと落ちてしまったトカ申します。 なんとも罰当たりな男でございますナ。 さて、この色男の業平にも。 肝をつぶす出来事がございまして。 ようやく我々も溜飲を下げられる。 これこそバチがあたったのだトモ申せます。 なにせ、このときモノにしようとした相手と申しますのが。 伊勢斎宮に勝るとも劣らぬお方でございまして――。 あるとき、右近の中将在原業平朝臣は。 ある人の娘が絶世の美女であると耳にした。 そうなるト、居ても立ってもいられないのが色男。 さっそく、あれやこれやト言い寄り

    業平と芥川の人喰い倉 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    share-lab 2019/07/19
  • 葛飾北斎 ―画狂老人は一処に安住せず― | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    KATSUSHIKA HOKUSAI 転居93回、改号30回。北斎は当に奇人だったのか 欧米での信仰的とも言える評価に反して、日での北斎評はまず「奇人」である。 そのイメージは、飯島虚心の著した明治期の評伝「葛飾北斎伝」によるところが大きい。 序文にはっきりと「画工北斎畸人也」とあり、また家の中はごみまみれで、ために93回も転居したとある。 どうやら、絵を描くこと以外はまるで無関心だったようだ。 無愛想で人付き合いが悪く、金には無頓着だった。 掛取りが来ると、机の上に置きっ放しだった画工料を、包みのままどんと投げてよこしたという。 それでもっていかないといけないから、一説では己の画号を弟子に譲って金に変えた。 それが30回という異常な改号の多さにつながったともいう。 (※クリックで拡大します) 晩年の弟子露木為一による「北斎仮宅之図」 虚心が露木から提供されたもの (左の女性は娘のお

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    share-lab 2019/07/11
  • 仏教説話の怖い話より 「朽ちても朽ちぬ赤い花」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 都が奈良にあった頃の話でございます。 大安寺に弁西ト申す僧がございまして。 この者は白堂(びゃくどう)を生業トしておりましたが。 白堂トハなにかト申しますト。 欲深き民百姓どもがお寺にやってまいりまして。 あれやこれやト願い事を口にいたしますが。 その願いを仏に取り次いでやる者のことを申すそうで。 「子宝に恵まれとうございます」 「病身の母がどうか回復いたしますよう」 「縁結びをどうかひとつ」 ナドと、好き勝手なことを口々に申しますが。 弁西は嫌がる気色は微塵も見せず。 そのすべてを漏らさず書き留めてやり。 一つ一つを民に代わって丁寧に。 御仏(みほとけ)へ奏上いたします。 中には己のかつて犯した罪業の。 お目こぼしを求めに来る輩もある。 「実はむかし、朋輩を手に掛けたことがございます」 「隣の家の倅を人買いに売り渡しました」 「米蔵に盗みに入ったのは私でございます

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    share-lab 2019/03/26
  • 江戸怪談より 「長いものは窓より入る」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 三代家光公の御世のこと。 豊前国小倉藩は細川殿の領国でございましたが。 その隷下に高橋甚太夫ト申す弓足軽の大将がおりました。 この者は曲がりなりにも大将トハいいながら。 武士の風上にも置けぬ小人物で。 いま、足軽トハいえ大将の職責にありますのも。 実は同僚の手柄を盗んで奏上したためであるという。 ところが、この者がそれでもなんとかやっておりますのは。 一にも二にも、この者には惜しいほどのよくできたがあったためで。 は名を千鶴ト申しまして。 近在の百姓の娘でございましたが。 容姿は地味ながら美しく。 人となりはしとやかで慎み深く。 まさにその名が示す通り。 掃き溜めに鶴といった趣で。 さて、この頃は諸国大名の国替えが頻繁に行われておりましたが。 細川殿もかの肥後国熊藩へ転封と相成りました。 夫婦は初めて生まれ故郷を離れましたが。 亭主は異国暮らしに浮かれたものか

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    share-lab 2018/10/22
  • 民話の怖い話より 「鬼婆が血となり肉となる」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 ある山奥の貧しい村に。 竹林に囲まれたぼろ屋がございまして。 老婆と孫娘が二人で暮らしておりましたが。 夜空に月が白く冴えた。 ある秋のことでございます。 高く伸びた竹がゆらゆら揺れる。 竹の葉がさらさら音を立てる。 風がかたかた板戸を鳴らす。 「おばば。寒くて眠られない」 「よしよし。おばばの布団へおいで」 おばばは齢六十で。 孫娘の志乃は十六で。 おばばには倅が三人おりましたが。 この数年で次々と亡くなってしまい。 残されたのはこの志乃ひとりでございます。 ほかに身寄りのないおばばは。 志乃を心底可愛がっておりました。 トハいえ、まだまだ子供と思っておりましても。 世間では十六といえばもはや年頃でございます。 現に、ひとつ夜着の中で身を寄せ合っておりましても。 志乃の体つきが小娘から娘に変わりつつあるのがよく分かる。 「志乃にもそろそろ婿を探してやらねばならんの

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    share-lab 2018/10/17
  • 鬼女の乳を吸う | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 都が奈良にあったころの話でございます。 陽は山の端に傾き入り。 群青の闇が押し寄せる中。 墨を引いたように続く一道を。 ぽつぽつ歩く人影がひとつ。 これは名を寂林(じゃくりん)ト申す旅の僧。 まだ三十路にも手の届かぬ若い聖でございます。 十六年前に故郷を出て以来。 諸国行脚の修行の最中で。 僧にもかつて愛しい母がおりましたが。 その母が不慮の死を遂げましたのを機に。 母への、土地への、根深い執着を断たんがため。 一念発起、国を捨てたのでございます。 さて、ここは大和国は斑鳩の。 寂林法師のその生まれ故郷。 長年の修行は心を堅固にし。 もはや、母へも国へも何ら想いはございません。 里外れの一道に。 風がひゅうひゅう吹きすさぶ。 草木がさらさらトなびきます。 ト、その時、行く手の藪の中に。 怪しき人影が見えました。 前かがみに両手を膝へ突き。 ムチムチと肉付きの良い

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    share-lab 2018/07/14
  • 荘園の森の艶やかな童女 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 只今では節分の日になりますト。 豆を撒いて鬼を追い払ったりナド致します。 ところで、この風俗の大元はト申しますト。 「追儺(ついな)」ト申す新年の宮中儀礼で。 古くに唐土から伝わったのだそうでございます。 この時、鬼を追い払う役を「方相氏(ほうそうし)」トカ申します。 熊の毛皮を頭から被り。 四つの目玉のある仮面を着け。 黒い衣に、朱い裳を履き。 手には矛と盾とを握りしめている。 威容を持って鬼を追い払おうト申すのでしょうが。 ――これでは、どちらが鬼だか分かりませんナ。 事実、我々が今日思い浮かべる鬼の姿は。 この方相氏が元になっているトカ申します。 さて、お話は唐の開成年間のこと。 洛陽に盧涵(ろかん)ト申す者がございまして。 この者は年は若く、見目麗しく。 おまけに財力にも恵まれている。 実にイヤらしい男でございます。 金と暇とを持て

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    share-lab 2018/02/27
  • 落語の怖い話より 「雨夜の悪党 引窓与兵衛」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    ところが、この与兵衛ト言うのが只者ではございません。 廻り髪結いト申せば聞こえは良いが。 呼ばれなければ廻りもしない。 時には呼ばれても行かない始末。 髪結いなんぞは博打の合間の余興程度に考えている。 江戸を離れ、かような在に住まっておりますのも。 そもそもが江戸に住まっておられなくなったからで。 引き窓の与兵衛ト呼ばれておりますのも。 金に困るト、引き窓――つまり、台所の上の天窓ですナ。 そこから忍び入って、盗みを働くトいう悪癖からで。 初めからお早を良い金づるくらいに思っている。 さっそく、好きな博打に金を使い込む。 博打で蔵を建てた人など聞いたことが無い。 大抵は取られるものト決まっておりますので。 半年も経たぬうちに新所帯は没落する。 荷車で運び入れた着物の山ナド見る影もない。 亭主は継ぎを当てた半纏を着て。 女房は簪ならぬ木の枝を髪に挿している。 そんなある日の暮れ方のことでござ

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    share-lab 2018/02/13
  • 江戸怪談より 「白い乳房に憑いたもの」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 大和国のトある商家に。 尼僧がひとり立ち寄りまして。 一夜の宿を求めました。 そればかりなら何の事はない。 誰も妙には思いますまいが。 この尼がただならぬト申しますのは。 あまりに若く美しかったからで。 白い頭巾から覗くその美貌。 年の頃なら十八、九。 のような頬にうっすらト紅が差し。 墨衣に包まれた姿態も妙にしなやかで。 「それはもちろん構いませんがな」 ト、主人が舐めるようにその容姿を見下ろす脇から。 「お前様のような別嬪がどうして尼に」 ト、お内儀(かみ)が割って入りました。 「それでは、お話いたしましょうから、家の方々を集めてくださいませ」 尼僧がこう申し出ましたので。 家内は無論、隣近所からも人が詰めかける。 にわかに法話の席が設けられました――。 尼は俗名をお雪ト申します。 まだあどけない童女であった時に。 二親に立て続けに死なれまして。 幼いながら天

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    share-lab 2018/01/30
  • 蛇女房 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 木曽の山中、人里離れた静かな森に。 木こりが一人住まっておりまして。 枝木を伐って暮らしを立てているトいう。 貧しい山男でございましたが。 与市ト申すこの者は、三十路を過ぎてなお独り身で。 ト申しますのも、早くに二親に死なれてしまい。 父親の商いを、見よう見まねでやってまいりましたので。 もう十幾年も、今日うのに精一杯で。 嫁取りはおろか、人付き合いもろくにしたことがない。 今日も今日とて、形見のナタを腰にぶら下げまして。 通い慣れた獣道を、奥へ奥へト歩み進んで行きますト。 突然、目の前にぱっと広がりますのは。 深い谷ト遠くの山々まで一望する。 崖の上からの景色でございます。 近頃、与市は毎日ここまでやってまいり。 日暮れまでずっと木を伐っておりました。 ここでナタをふるいますト。 カーンカーントいう甲高い音が。 谷底に大きく響きます。 するト、寂しく暮らす与市に

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    share-lab 2017/12/27
  • 吹雪の夜 一つ褥の妖かし話 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 清国の話でございます。 かの国の都、北京は金魚胡同ト申す路地裏に。 徐四ト申す男が暮らしておりまして。 この者の家は赤貧洗うが如しでございます。 兄と兄嫁、徐四の三人が、狭い家に肩寄せあっておりましたが。 五倫の道にやかましいお国柄とは言いながら。 男二人に女一人がおしくらまんじゅうをしているのも同然で。 いくら義姉弟トハ申せども、そこは男と女でございます。 年来、徐四は兄嫁に禁断の恋心を抱き続けておりました。 この兄嫁は年は二十二。 郊外の百姓家から嫁いできたのが七年前で。 切れ長の涼し気な目に、鼻筋がスッと通っている。 色白の美人でございます。 対する徐四は年は二十。 童顔でおとなしい若者でございまして。 粗暴な兄とは見かけも中身も正反対という。 それはそれで釣り合いが取れてはおりましたが。 気性の荒い兄が兄嫁に手をあげるたび。 徐四は兄を制しては、ひとり胸を痛

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    share-lab 2017/11/01
  • 妻の首をすげ替える | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 清国の話でございます。 陵陽県ト申す地に、朱小明という男がございまして。 この者は性質は豪気ながらも、頭が弱い。 おかげで未だ学成らず、長く世に出られずにおりましたが。 ある晩、仲間内で酒盛りをしていたときのことでございます。 一人が朱をからかって、こう申しました。 「お前みたいなのは、学問なんざ出来なくったっていいのだ。豪傑は豪傑らしくしていればいい。そうだな、今から行って十王殿の東廊から判官像を背負って帰ったら、このあとの酒代は全部おごってやろう。どうだ」 十王殿ト申すは、冥界の十王を祀った廟でございまして。 そのうちの一人が、かの閻魔大王でございます。 東廊に立ちはだかっているのは、緑の顔に赤い髭という判官で。 これは閻魔大王の配下ですから、下手をするとバチが当たる。 この土地の十王殿では、昔から夜になりますト。 亡き者を厳しく責め立てる声が、東西の廊下から聞

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    share-lab 2017/08/20
  • 仏教説話の怖い話 「母は蛭子を淵に捨てよ」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 我が日のには八百万(やおよろず)の神々がましますト申しますが。 みとのまぐわい(美斗能麻具波比)によって、この神々を産みたもうたのは。 伊邪那岐(いざなぎ)、伊邪那美(いざなみ)の二柱の男女神でございまして。 その第一に生まれた御子は、名を蛭子(ひるこ)ト申します。 これは「ヒルのごとく悪しきもの」トいうような意味だそうでございますが。 コトを始めるのに、女の方から声を掛けたのがいけなかったとかで。 御子は三年経っても足腰が立たなかったト申します。 哀れ、不具の子は葦舟に乗せられ、水に流されてしまいました。 これが我が朝の水子の初めでございます。 さて、お話は都が奈良にあった頃のこと。 難波津にとんでもない女がございました。 何がとんでもないかト申しますト。 この女はとにかく人からよく物を借りる。 そればかりなら誰も不満は申しませんが。 よほど人間が横柄に出来てい

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    share-lab 2017/06/07
  • 後家殺し | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 俗に、義太夫節は音曲の司(つかさ)などト申しまして。 聞いて楽しむのもよし、やって楽しむのもまたよしトいう。 お好きな方は寝を忘れてのめり込みます。 素人にも職顔負けの腕前の者がたくさんいる。 そもそもは大坂の竹義太夫が初めた節付きの語り物で。 座付作者の近松門左衛門が、人形浄瑠璃の傑作をいくつも書きました。 ところで、これは浄瑠璃に限りませんが。 お客が芸人に掛け声をいたします時に。 「待ってましたッ」 「よッ、日一ッ」 ナドと声を掛けますナ。 花火が上がれば、 「玉屋アァ」 ナドとも叫びます。 ところが、この義太夫を聞くときの掛け声はちょっと変わっている。 太夫(たゆう)が唸る。 徐々に場が盛り上がってまいりますト。 お客が間合いを見計らいまして。 「よッ、後家(ごけ)殺しッ」 ト、声を掛けます。 これが一番の褒め言葉だそうで。 そんな物騒な褒め方を。

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    share-lab 2016/11/17
  • 二度目の妻と嚢中の錐 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 元朝の話でございます。 遼東の按察使を長く任された者に。 姚忠粛(ようちゅうしゅく)ト申す男がございました。 按察使トは何かと申しますト。 朝で申すところのお奉行様で。 姚忠粛は、さながら大岡越前の如き名奉行。 ――ならぬ名按察使でございます。 その配下には与力、同心の如き役人が。 あまた従っておりましたが。 どれもこれも傑物揃いで。 みなで姚の名裁きを支えておりましたが。 中でも丁欽(ていきん)ト申す者は。 その人並み外れた推察力で。 いつも同輩たちをあっと驚かせる。 いわば姚奉行の懐刀でございます。 さて、この丁欽でございますが。 近頃になって、を娶りました。 これがまた、ただのではございません。 国に二人といないような、まさに女傑でございます。 容姿は非常な美人でございまして。 小柄ながら、なんとも言えない艶がある。 かてて加えて、聡明で。 才色兼備とは

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    share-lab 2016/11/10
  • 今戸五人切 お藤松五郎 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 両国広小路にずらりと居並ぶ茶店の中に。 「いろは」ト申す流行りの店がございまして。 その看板娘は、名をお藤ト申す十九の別嬪でございます。 お藤をひと目見たさに、客が江戸中から集まってくるほどで。 そんな野郎客どもの淡い恋心をあざ笑うかのように。 このお藤にはしっかりと、旦那というものがございました。 母親ぐるみ、柳橋の家にとうの昔から囲われている。 母娘が贅沢な暮らしを送れるのも、みなこの旦那のお陰でございます。 評判の茶屋娘を囲っているのは、どんな男かト申しますト。 横山町で道具屋を営んでいる、萬屋清三郎ト申す分限者です。 金はあるが、色の生ッ白い、ぶよぶよと肥えた男でして。 お藤はこれを「水瓶へ落ちたおまんまッ粒」ト、実は大層嫌っている。 その日は昼頃からぽつぽつト雨が降り出しまして。 お藤と母は早くに店をしまい、家に引きこもる。 二階に上り、母娘で昼間から差し

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    share-lab 2016/11/08
  • 三人尼と踊り茸 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 平安の昔の話でございます。 ある冬の初めのこと。 山に三人の木樵が入っていきました。 白髪の年長者、古之尉(ふるのじょう)。 壮年の年中者、寅麻呂(とらまろ)。 そして今日が初めての山入りとなる、和賀彦(わかひこ)の三人でございます。 木樵にとって、山へ初めて入ることとは。 大人として周りから認められることでもございます。 山には山の掟がございますから。 大人になった以上、それを守らなければなりません。 この日のために、和賀彦は。 七日七晩の精進潔斎をして臨みました。 心身ともに清浄でなければ。 山の神の怒りを買い、妖魔に襲われるト。 古之尉から教えられたからでございます。 和賀彦は生来、生真面目で臆病者でございますので。 とにかく、この七日間が気が気でございませんでした。 体の垢ならいかようにも洗い落とせますが。 心の垢は落ちたかどうだか、己では測りようがございま

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    share-lab 2016/10/31
  • 比丘尼の長風呂 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐土(もろこし)の話でございます。 魏呉蜀の三国鼎立時代を終わらせましたのは。 司馬炎が魏の元帝から禅譲を受けて建国した晋でございます。 その晋も、やがて夷族の匈奴に華北を追われまして。 都を洛陽から長安、さらに建業へと遷しました。 建業に遷ってより後を、俗に東晋ト申しますナ。 さて、この東晋の国に。 桓温(かんおん)ト申す軍人がございました。 東晋長年の悲願であった、北伐と洛陽奪還とを。 一時にせよ成し遂げた、国の大功労者でございます。 桓温はこの功績によりまして。 大司馬トいう軍人の長に任じられました。 勢いに乗じて、北府軍団および西府軍団と。 二つの強大な軍団を手中に収めまして。 東晋の実質的な権力者の地位に躍り出た。 我が日ので申しますト。 さしずめ平清盛といったところでございましょう。 晩年には、幼い簡文帝をみずから擁立いたしまして。 さらには自身への禅

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    share-lab 2016/10/28
  • 猫又屋敷 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 昔、周防国に大きな店構えの商家がございまして。 長年、一匹のが住み着いておりましたが。 この家のお内儀(かみ)が、質(たち)の悪い女でございまして。 いつも、このいじめておりました。 嫌いなのかといえば、そうではない。 勝手に住み着いたを、もう五年も飼っている。 朝昼二度の餌もしっかり与えます。 それでは大事にしているのかといえば、そうでもない。 見かけるたびに外へ放り投げたり、蹴飛ばしたり。 酷い時には、焼け火箸で頭を叩いたり。 生かさず殺さず、何かのはけ口にしているとしか思えない。 の方でこの家を出ていかないのにはわけがありまして。 何も、ネズミがたくさんいるからというのではございません。 この家の女中が、を哀れに思っておりまして。 いつも優しく接してくれるからでございました。 そのが、ある日ふっと姿を消しました。 勝手口の脇には、いつもはすぐ空

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    share-lab 2016/10/26
  • 右も左も同じ顔 玄陰池 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-

    こんな話がございます。 唐土(もろこし)の話でございます。 かの国の西北、太原の地の商人に。 石憲(せきけん)ト申す者がございました。 たいそう無鉄砲な男でございまして。 危険を顧みもせず、北の夷族の地にまで。 しばしば、商いに出向いておりました。 その年の夏も、石憲は雁門関をひとり超えて行く。 これは雁門山中にある唐土の側の関所でございまして。 匈奴、鮮卑、突厥といった夷族の侵入が続いた頃。 中原の地を守るために設けられた要衝でございます。 北方とはいえ、その日はうだるように暑い日で。 歩き疲れた石憲は、路傍の大木の下で涼んでおりましたが。 あまりの熱さに朦朧とするのか。 さてまた、眠気に襲われたのか。 ともかくも、うとうとトまどろみ始めたその矢先に。 石憲を間近に覗き込む一人の男の姿があった。 褐色の法衣を身にまとい。 やぶにらみの細い目でこちらをじっと見ている。 その様子に石憲が思わ

    右も左も同じ顔 玄陰池 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
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    share-lab 2016/10/21