「夢に見たんですよ、ぼんやりとですけど、この方法を…」 「いいんじゃないか。見方を変えてみても」 昼下がりの、まったりとした時間帯だった。ソニーエナジー・デバイス郡山事業所(福島県郡山市)の1階にある喫煙ルーム。申し合わせたわけではないのに、この日も2人は居合わせる。磁石に鉄粉が引き寄せられるように。 リチウムイオン電池の高出力全般に関するエンジニア、石井武彦はとりとめもなく、前夜にみた夢の話をしていた。 プロジェクトの責任者であり、事業部の部長兼設計課長だった福嶋弦(ゆずる)は自然体で受け入れて、自分なりの意見を返していく。 2人は、紫煙を燻(くゆ)らせている。“タバコ部屋”にいる部外者が見れば、どこか脈絡がなく、何を言い合っているのかはわからない会話だ。が、2人は互いに頭脳をフル回転し合って、会話を続けていたのである。 2007年秋の某日のことだった。この年、郡山事業所では、オリビン型