第57回:イカロスドキュメンタリーというと日本では「記録映画」のイメージが強い。着実にインタビューを重ね、人々の暮らしや働きぶりを淡々と描写し、その向こう側にうっすらと見えてくるものを押しつけがましくなく浮かび上がらせていく。それはもちろん素晴らしいのだが、ハリウッド映画の速度感に慣れてしまっている21世紀の観客がそういう記録映画に接すると、「退屈で地味だなあ……」と感じてしまう。それでますます日本のドキュメンタリー分野は盛り上がらなくなる。 Netflixオリジナルドキュメンタリー映画「イカロス」ドキュメンタリーは退屈で地味だと思っている人は、ぜひこの「イカロス」を観てほしい。映画館に行く必要さえない。なぜならネットフリックスのオリジナル作品だからだ。こんな作品が月額課金で自宅で見られるなんて、まったく信じられない。 私は、素晴らしいドキュメンタリーには三つの要素があると考えている。第一
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