「図書館で文庫本を貸し出さないで」――。全国図書館大会での文藝春秋・松井清人社長の発言が大きな反響を呼んでいる。出版界を取り巻く環境は厳しさが続き、特に文庫本の売れ行き不振は深刻だ。販売金額は2014年から3年続けてマイナスとなり、ピークの1994年の7割にあたる1069億円に落ち込んだ。「文庫本の貸し出しが市場低迷の原因などと言うつもりはない」。そう明言する松井社長に、貸し出し中止要請の真意を聞いた――。 ■貸し出しやめても急速に業績回復はしない ――発言後、図書館の利用者からの反響はどうですか。 【松井】年金生活者の方から会社に抗議の電話がかかってきました。私が受けた3人の方の1人からは「金のない高齢者に本を読むなということか」と言われました。図書館利用者に年金生活者が多いのはわかりますが、でも本が好きな方であれば、出版業界の実情をきちんと話せば理解してくれます。文庫本の元になった単行