冬晴れの東京都心。気持ちがいいから、と並木道をふらり歩く。撮影スポットを探していると、「地べたに座りたいな。あの階段なんて、いいんじゃない?」。街歩きのテレビ番組にも出演している俳優は、自然と風景に溶け込んでいく。 デニムの上着からのぞくTシャツには、<漣>の1字がプリントしてある。「さざなみとも読むんですが、波とは寄せては返すものです。人生も失敗があって少し成長する、その繰り返し。それをお見せするのが、僕らの仕事だと思います」 この芸名を付けたのは20代、東京・赤坂を拠点にしたアンダーグラウンドの小劇団「転形劇場」で舞台に立っていた。役者がせりふを発しない「沈黙劇」を探求し、実験的な作品は欧州など海外でも上演された。