音楽の世界で、希有な女性シンガーの才能を示す称号はいくつもある。たとえば「歌姫」「ディーヴァ」、現在の音楽カルチャーにおいては「アイドル」も特別な響きを持つ。だが、真に刮目すべき才能に対して、私たちはどんな言葉を与えることができるだろう。言葉を失うほどの才能、おそらくCoccoはそんな存在の1人だ。1996年のデビュー以来、数々の名曲を発表し、同時に同じ数だけの断絶を経験してきた彼女は、今、新たなステージに立とうとしている。来年1月に東京・大阪で上演が予定されている舞台『ジルゼの事情』がそれだ。 映画『KOTOKO』でスクリーン越しに女優として現れた彼女が、今度は私たちの目の前に生の身体を現そうとしている。既に初回発売分のチケットは完売したことからも、新たな展開に対する期待の大きさは察することができる。今、なぜCoccoは演劇に向きあうのだろうか。 『KOTOKO』に出演したとき、「演技は