ニーチェが嫌いだ。 っていうより、日本におけるニーチェの受容のされ方が嫌い。 「普通の若者、ビジネスマンがニーチェを読んでいる」と言われてきて久しいけれど、その実態はというと、著作から勇敢そうで歯切れのいい言葉を恣意的に引用・編集し、ポジティブ思考を翼賛しまくるだけの自己啓発本へと貶められている…。 哲学をちょっとでも愛する人には、こういう不満をもつ人が多いだろう。しかしこれぐらいのことなら、ウザくてバカバカしいとは思うものの、まだ笑って許せる範囲ではあるまいか。もっと根深い問題は、ニーチェ・ブームとやらが偏狭なナショナリズムに吸収されてしまうことなのだ。現にニーチェの研究と翻訳に長年携わってきた第一人者に、西尾幹二みたいな、ニーチェが言うところの自由精神とは全く程遠い人物もいる。これはまさしくこの問題の深刻さを象徴している現象と言えよう。 ニーチェは、当時勢いを増しつつあった社会主義を批