つり上げ作業が進む、津波で打ち上げられたフェリー（１７日午前８時３８分、宮城県気仙沼市で）＝伊藤紘二撮影 宮城県気仙沼市の離島・大島で１７日、津波で陸に打ち上げられたカーフェリー（３０６トン）をクレーンでつり上げ、海に戻す作業が行われた。 大島は人口約３１００人の同県最大の離島。フェリーは大島汽船が運営し、島と気仙沼市中心部を結んでいたが、津波で島の岸壁から約２００メートルの内陸まで流された。 午前７時ごろ、多くの島民が見守る中、フェリーを高さ数十メートルのサルベージ船のクレーンでつり上げる作業を開始。午後に着水させる予定だ。 同社は３月下旬に県内業者から旅客船を借りて定期便を再開。その後、県外からもフェリーを借り、今は１日１６往復運行している。 大島で避難所生活を続ける熊谷武子さん（７４）は「病院に行くにも買い物に行くにも、船が無くては何も出来ない。家も流されてつらいことばかりだけど、船

仮設住宅が全戸完成　今後は寒さ対策着手　岩手県 岩手県は１１日、東日本大震災の被災者向けに整備していた仮設住宅１万３９８３戸が完成したと発表した。今後、冬に向けて仮設住宅の断熱性能の向上など環境改善に取り組む。 　１１日現在の入居戸数は１万１４０５戸で入居率は８１．６％。約１４００戸が空き室になる見込みで、県はボランティアなどが利用できるよう、災害救助法の柔軟な運用を国に要望している。 　仮設住宅の環境改善策では、プレハブ型の７０００戸を対象に、９月末までに外断熱工事を施し、風除室や網戸を設置する。３１９カ所の団地全てで、１０月末までに団地内通路を舗装する。

盆舟犠牲者悼む　寺や漁港に手向け　気仙沼 盆舟を寺に納め、手を合わせる市民ら＝１６日、気仙沼市本町の観音寺 送り盆の１６日、震災で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市では、お盆に出迎えた故人の魂を送るための手作りの小舟「盆舟（ぼんぶね）」を寺や漁港に納める人たちの姿が見られた。 　盆舟はわらが主な材料で大きさは６０～８０センチ。ハスで包んだ団子や果物を一緒に乗せたり、色紙を飾り付けしたりする。昭和の中ごろまでは川や海に流していたが、現在は寺の境内に持ち寄るのが一般的という。 　同市本町の観音寺には、午前７時ごろから盆舟を手にした家族連れらが訪れた。舟を納めると線香を手向けて犠牲者らを悼んだ。 　親類が津波で亡くなったという同市松崎高谷の無職高橋信雄さん（８０）は「犠牲者のためにも、力を合わせて復興に向かいたい」と話した。介護していた母を６月に亡くした同市本郷の伊東よし子さん（６３）は「一緒に震

気仙沼のジャズ再び　被災老舗喫茶が改装 コーヒーの香りと、常連客の笑顔が戻ったジャズ喫茶「ヴァンガード」と川原さん（右）。津波で泥をかぶったレコードもきれいにした＝気仙沼市南町 宮城県気仙沼市内の老舗ジャズ喫茶が、東日本大震災の被災を乗り越え営業を再開した。復興に向かおうとする港町に、ジャズの音色がよみがえった。 　復活したのは、同市南町にある「珈琲専門店ヴァンガード」。１９６７年に開店し、４０年以上続くジャズ喫茶として市民に愛されてきた。 　津波で大切にしてきたレコードが流され、グランドピアノがひっくり返り、壁や天井が大きく突き破られた。 　オーナーの川原尚さん（７３）と仲間で泥をかき出す毎日を繰り返し、以前の雰囲気を大切にして改装した。７月に入ってようやく再開できた。 　全国のジャズミュージシャンや、ジャズ愛好家らの温かい支援を受けた。現在はオーディオ機器はなく、小さなＣＤラジカセでジ

仙台、気仙沼、石巻で被災者へ就職面接会 東日本大震災の被災者に就職機会を提供しようと、県、宮城労働局などは９月、仙台、石巻、気仙沼３市で、合同就職面接会を開く。 　震災で離職、廃業を余儀なくされたり、採用内定を取り消されたりした県内に住む求職者が対象。仙台会場１０００人、気仙沼会場２００人、石巻会場３００人の来場を見込んでいる。 　参加企業は県内外から募集しており、仙台１００社、気仙沼２０社、石巻３０社の計１５０社になる見通し。 　会場には臨床心理士によるカウンセリングのブースを設け、被災した求職者らの相談を受け付ける。無料送迎バスを運行する予定。 　仙台会場は９月８日に仙台サンプラザホール、気仙沼会場は同１４日に気仙沼プラザホテル、石巻会場は同２０日に石巻グランドホテル。仙台、石巻両会場は午後１～４時、気仙沼会場は午後１～３時。 　求職者の参加は無料で、事前申し込み不要。連絡先は県雇用対

一関の仮設入居者に商品券　気仙沼市が独自支援策 宮城県気仙沼市の加藤慶太副市長は１２日の記者会見で、一関市室根町と同市千厩町に建設する応急仮設住宅の入居世帯に商品券を配ることを発表した。両住宅は県境をまたぐため申し込みが伸び悩んでおり、市は独自の生活支援策を設けることで入居を促す。 　商品券は室根の住宅が２万円分、千厩が３万円分で、それぞれ半額は室根町と千厩町の共通商品券を提供する。残りの半額は気仙沼で利用できる商品券を配る。 　高校生の通学費の支援も行う。９月から２０１２年３月までの７カ月間のＪＲ大船渡線での通学費として、室根は４万１９０円、千厩は６万９４２０円分の定期券を現物支給する。 　１７日招集予定の市議会臨時会に提出する２０１１年度一般会計補正予算案に、関連経費１４２８万円を盛り込む。 　市社会福祉事務所によると、二つの仮設住宅合わせて３２０戸に対し第１希望として申し込んでいるの

宮城県、コメ出荷自粛要請　線量結果判明まで 宮城県は１２日、２０１１年産米の放射性セシウム濃度検査に関する説明会を大崎市と大河原町で開き、集荷業者や農協、市町村担当者に、検査結果が判明するまでの出荷自粛を要請した。 　県大河原合同庁舎であった説明会には約１００人が参加。大久保栄喜県農産園芸環境課長は「ブランドを守るため（収穫後の）本調査結果が分かるまで出荷を自粛してほしい」と理解を求めた。 　質疑応答で、丸森町のコメ集荷業横山修一さん（５８）は「本調査の結果が出るまで何日くらいかかるのか」と質問。県は「サンプル採取が終了してから１週間くらいは考えてほしい」と答えた。 　他の出席者からは「収穫直後は販売に有利な時期。生産者は大きな損失を受ける可能性もある」との指摘も出た。 　検査は市町村ごとの予備調査と、その結果を踏まえた本調査の２段階で実施。本調査で１キログラム当たり５００ベクレルを超える

宮城県内の労災遺族申請１０００件超　津波被災９５％か 東日本大震災後、犠牲者の家族による労災申請の件数が宮城県内で１０００件を突破したことが１６日、宮城労働局の調べで分かった。１９４７年に現行の労災制度が確立されて以降、最大規模の申請件数という。同局は最終的に１５００～１６００件の申請を見込んでいる。 　震災発生から１５日までの、宮城県内のけがを含む労災申請件数は１２５３件。このうち、遺族による補償の給付申請は１００５件に上った。死亡が確認されたのは９２６件。７９件は行方不明のままの申請だった。９５％以上が津波による犠牲者とみられる。 　１００５件の申請のうち、８３９件の支給が決定。１件につき少なくとも一時金３００万円が支給されることから、支給総額は現段階で２５億円を超えている。 　宮城県内の労働基準監督署別の遺族による申請件数は表の通り。古川、大河原、瀬峰の内陸部の各署でも、勤務中に沿岸

蒲生干潟復活の息吹　津波で壊滅、希少動植物確認　仙台 現在の蒲生干潟（８月１０日撮影）。震災間もなく（３月２５日撮影）と比べて、分断されていた砂浜がつながり、袋状の形状を取り戻した 蒲生干潟（３月２５日撮影） 生息が確認された巻き貝のフトヘナタリ。金谷研究員は「干潟の生物は回復しつつある」と話す 東日本大震災の大津波で壊滅した仙台市宮城野区の蒲生干潟が、袋状の形状と動植物の生息地としての特性を取り戻しつつあることが、国立環境研究所（つくば市）の金谷弦特任研究員（動物生態学）の調査で分かった。 　金谷研究員によると、震災前、干潟の海側に南北に広がっていた砂浜は津波によって数カ所、大規模に分断。海水が直接、潟内に流入していた。現在、砂浜は完全につながり、潟湖の汽水環境が復活しつつある。 　震災前、奥行き８６０メートル、最大幅２５０メートルの潟湖内に広がっていた干潟の面積は、東側の淡水池と直結す

津波の怖さ子に伝えたい　家族来訪相次ぐ　宮城・南三陸 実家のあった鮮魚店の周辺を歩く滝川さんと子どもたち＝１５日午後３時ごろ、宮城県南三陸町志津川 お盆に入った東日本大震災の被災地では、夏休みを利用して訪れる子どもたちの姿も目立つ。１５日も津波で被災した親類を訪ねたり、子どもに津波の脅威を伝えようとやって来たりした家族連れが多かった。「津波の怖さを心に刻んでほしい」。親たちは子どもの手を引き、がれきの街を歩いた。 　「あんな高いところまで水が来たんだよ」 　宮城県南三陸町志津川の公立志津川病院。津波で破壊され、２階には漁船が乗ったままだ。兵庫県西宮市の渡辺善和さん（６２）は、娘で小学５年の桜さん（１１）に語り掛けた。 　渡辺さんは阪神大震災で被災。火の手が街をのみ込む中、何もなすすべがなかった苦い記憶がある。「いつ何が身に降りかかるか分からない。自然の怖さを娘自身の目で確かめてほしい」と願

食用イネから微量セシウム　宮城県放射性物質測定 宮城県は１２日、県内７市町で採取した出穂前の食用イネの放射性物質測定結果を公表した。丸森町、白石市のイネの茎と葉から微量の放射性セシウムが検出された。 　県によると、食用イネの測定は初めて。セシウムの検出量は水分を含んだ状態で、丸森町のイネが１キログラム当たり２３．１ベクレル、白石市のイネが３．８７ベクレルだった。柴田、大和、大崎、栗原、登米の各市町では検出されなかった。食品中に含まれるセシウムの国の暫定基準値は５００ベクレル。 　今月１日に各地で採取し、農業環境技術研究所（茨城県つくば市）で分析した。同研究所によると、水分を含まない状態で、玄米のセシウム濃度は、茎や葉の濃度の２分の１～３分の１程度になるという。

見えぬ生活再建　在宅避難者、住宅修繕踏み切れず　石巻 夕暮れ時、懐中電灯の明かりを頼りに家計簿を付ける杉山さん＝１０日夕、石巻市中央１丁目 １階が津波で被災した自宅の２階などで生活する「在宅避難者」が多い宮城県石巻市では、東日本大震災の発生から５カ月がたった今も、台所や風呂が使えない厳しい環境で暮らす被災者も目立つ。被災規模が大きいことに加え、仮設住宅への入居や、自治体の復興計画づくりが遅れていることなどが背景にある。 ＜ガスも電気もなく＞ 　旧石巻市役所に近い中央１丁目の会社員杉山創さん（６２）は、１階天井まで水に漬かり、ガスも電気もない自宅で暮らす。夜は懐中電灯で明かりを採り、携帯式ラジオを聞く。食事は、地区の配給所に市から届く弁当やおにぎり、パンだ。 　妻の愛子さん（５９）は震災当日、外出先から「渋滞に巻き込まれている」とのメールを送ってきたのを最後に行方不明。「妻を迎える準備をした

被災者２０人　育てた花を手向ける　気仙沼 美しく咲いた花で、震災の犠牲者にささげる花束を作る被災者 宮城県気仙沼市の階上公民館で避難生活を送る震災の被災者約２０人が１２日、自分たちが育てた花を摘んで花束を作った。花束は１３日に近くの地福寺であった盆の迎え火法要で供えられた。 　公民館に身を寄せているのは、９３人の死者・行方不明者を出した同市波路上杉ノ下地区の住民で、今は１５世帯２５人が暮らしている。 　公民館に避難した４月中旬以降、全国から寄せられたアスターや小菊の苗約１２００株を近所の畑で栽培。１２日は朝、見ごろを迎えた花を収穫し、公民館の外で１本ずつ丁寧に束ねていった。 　中心になって花を育てている農業佐藤信行さん（６０）は、母（８７）を亡くし、妻（６０）は行方不明のままだという。 　佐藤さんは「花の栽培は初めてだったが、きれいに咲いてくれた。亡くなった人が成仏し、行方不明者が早く見つ

５カ月遅れ誓い新た　南三陸・歌津中で卒業式 阿部校長（左）から卒業書証を受け取る生徒＝１３日午後、歌津中体育館 東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の歌津中で１３日、昨年度の３年生の卒業式が開かれた。生徒や保護者らが出席しやすいようお盆休みの時期に延期していた。卒業証書は５カ月遅れで生徒たちの手に渡った。 　７２人の卒業生に対し阿部友昭校長は「『命』『意志』『今』の三つを大事にしてほしい。今この時を真剣に生きて、自分を磨いてください」と激励した。 　卒業生代表として高橋昂聖君（１５）＝都立江北高１年＝が「震災を経験し、あらためて友情の尊さを実感している。歌津中で強めた絆で壁を乗り越え、多くのことを学び、自分色の花を咲かせたい」と誓った。 　卒業生は進学した高校の制服や歌津中の制服を着て出席した。震災の被害で東京に移り住んだ高橋君は同級生との再会を喜び、「いつか歌津に戻り、自分たちの世代で復

復興担う子ども育てたい　気仙沼で保育士７人託児所開設へ ９月１日の開園に向けて準備を進める保育士たち＝気仙沼市田中前２丁目 東日本大震災で被災し、休園している私立「新生保育園」（宮城県気仙沼市本郷）の保育士７人が、被災者向けの低料金託児所「つぼみ」を開く。子どもを預けていた親たちから再開を望む声が強く、自分たちで開設資金を出し合った。７人は９月１日の開園を目指し、「復興を担う子どもたちを育てたい」と張り切っている。 　つぼみは気仙沼市田中前２丁目のアパート１階の事務所跡地を活用。生後６カ月から３歳の乳幼児を預かり、おもちゃは善意で寄せられたものを活用する。保育時間は午前８時～午後５時半で、延長保育や一時預かりも行う。 　アパートの敷金や部屋の改修費用は７人で出し合った。家や仕事を失った保護者も多いため、料金は月１万７０００円程度に抑制。保育士の報酬は当面、見込めない状況でのスタートになる。

祈り思う“あなた”　被災地に初盆 多くの墓石が流された霊園にも墓参の人々が訪れた＝１５日午前８時３０分ごろ、気仙沼市波路上の明戸霊園 墓参りに訪れた西條さん（中央）ら＝１４日、宮城県南三陸町戸倉 東日本大震災の後、初めてのお盆を迎えた東北の被災地では、遺族らが墓参や法要を行い、犠牲者をしのんだ。家族や友人の冥福を墓前に祈る人。行方不明の家族を思い、津波で流された自宅跡に花を手向ける人。犠牲者の霊にそれぞれの祈りがささげられた。津波に襲われた墓地では炎天下、被災者が懸命に先祖の墓石や法名碑を探した。 ◎生きて帰ってくる気がする／悲しみは続くでもこの町で 　「お父さん、早く見つかって」。宮城県南三陸町の清水寺で１４日、同町出身の西條みよ子さん（５７）＝登米市＝が墓前に手を合わせた。 　「生きて帰ってくる気がする」。そんな思いが消えない初盆だ。 　葬儀は終えたものの、父の大石肇さん（８１）はいま

帰ってきて、ここに　被災地初盆　気仙沼で迎え火 迎え火に手を合わせる震災犠牲者の遺族ら＝１３日午後６時４０分ごろ、気仙沼市波路上牧 東日本大震災の被災地もお盆を迎えた。犠牲者にとっては初盆となる。東北の被災地では１３日、帰らない肉親に語り掛けるように、墓前で静かに手を合わせる姿が見られた。各地で慰霊の行事も行われた。 　宮城県気仙沼市波路上牧の地福寺では、震災犠牲者の霊を迎える法要「迎え火のつどい」があり、多くの市民が集まった。地福寺の檀家（だんか）だけでも、震災の死者・行方不明者は１５０人に上るという。 　祭壇の前で片山秀光住職（７１）は「帰ってきてください。この地で皆とゆっくり過ごせるよう、祈りを込めて迎え火をたきます」と慰霊の言葉を述べた。出席者が焼香し、夕方には寺から約８００メートル離れた海岸で、大きな迎え火がたかれた。 　おじが見つかっていないという同市波路上原の主婦尾形知子さん

内陸部の仮設即入居可　石巻市が随時募集 宮城県石巻市は、河南、河北、桃生地区の仮設住宅への入居希望者を随時受け付けている。市内陸部の仮設住宅は申し込みが低調なため、抽選などの手続きをなくすことによって少しでも早く被災者の入居を促したい考えだ。 　随時受け付けを行うのは河南地区４１３戸（１０団地）、河北地区４１７戸（１団地）、桃生地区２２０戸（４団地）。 　これらの団地は津波の被害を受けた沿岸部から離れ、商業施設や学校からも遠いなど利便性が悪いところが目立つ。このため全般に申し込みが少なく、河北地区の大森団地は４５０戸を建設するうち、今月１日時点で３３戸しか入居希望がない。 　仮設住宅の入居は通常、対象物件の希望者を募り、定期的に抽選を行って決まる。今回は手続きを簡略化し、希望者がいつでも好きな物件に入居を申し込める形にした。当該地区以外からの申し込みも可能。毎日午前９時～午後４時に受け付け

帰省に水差す　大潮で冠水相次ぐ　気仙沼 大潮の時期を迎え、東日本大震災の影響で地盤が大きく沈下している宮城県気仙沼市の港湾沿いでは、県道や市道で冠水が相次いでいる。帰省している家族連れも、冠水箇所を避けて遠回りを余儀なくされた。 　冠水が深刻なのは旅客船乗り場や市魚市場の周辺、水産加工場が多かった鹿折地区など。満潮の時刻となった１５日の午後５時ごろには、水深は深い所で約３０センチに達した。 　妻が同市出身という茨城県の会社員飯利春三さん（５８）は「どのくらい深いのかが分からない。点灯していない信号もあって運転に不安を感じる」と話した。 　仙台市から帰省している会社員新倉和彦さん（３７）は「買い物に行くにも不便だ。早く解消してもらいたい」と訴えた。 　市と県は潮位が高い時間帯は通行しないよう、看板を設置して呼び掛けている。市土木課は「交通量や冠水の程度を踏まえて順次かさ上げ工事をしている。も