映画と夢は相性がいい。映画自身も夢を描写してきたし、鑑賞者の側も精神分析などを用いて、夢を分析するように映画を解釈してきた。しかも、この「夢」には、睡眠時に見る夢と、願望の投影である夢との両方の意味が託されている。テクノロジーによる芸術であり、同時に大衆娯楽でもあるが故に、映画は資本主義の欲望と併走し続けるという宿命を負わされてきた。全米興行収入二位の記録を更新した『ダークナイト』(2008)の監督、クリストファー・ノーランもまた、その映画の持つ宿命と格闘せざるを得ない監督であるようだ。 新作『インセプション』は夢を主題にした映画である。簡単に物語を紹介しよう。この作品世界では、夢に侵入する装置が開発されている。主人公コブ(レオナルド・ディカプリオ)は、相手の脳内からアイデアを盗む産業スパイだが、サイトー(渡辺謙)の夢に侵入して失敗し、逆にサイトーの依頼でライバル企業に「インセプション」を