美しいアナベル・リイ (新潮文庫) 作者: 大江健三郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/10/28メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 18回この商品を含むブログ (12件) を見る 承前*1 大江健三郎『美しいアナベル・リイ』への川本三郎*2の「解説」に曰く、 大江健三郎は特異な私小説作家である。 自身を思わせる「私」を中心に、その妻、子供の「光」、娘、故郷である四国に住む母、妹、あるいは妻の兄である映画監督、といった実在する家族を登場させながら、そこに大胆に虚構を持ち込んでゆく。私小説という狭い世界を、伝承や世界文学と響き合う豊かな物語の世界へと広げてゆく。「ファンタジー化した私小説」というゆえんである。 (略) 大江健三郎にとって私小説という日本近代文学の伝統的手法はあくまでも、私小説を乗り越える手段になっている。読者は、私小説を読んでいるつもりだったのにいつのまにか