感染呪術。 かつてトリシューラから受けた講義を俺なりに解釈すると、この呪術は関係性の拡張である以前に、身体性の拡張に含まれることになる。 まず『あらゆる生命は元は一つのものであった』という認識を用意する。 親子はもちろん近しい親族に至るまで、『起源が同一である』という点に繋がりを見出すことで、同質性を仮構するのだ。 社会的形態としての『家族』を参照するのは使い魔呪術の領分だが、『血』や『遺伝子』を身体性に含めることで、杖使いでも『家族』と『自己』とを結びつけることが可能になる。 人は皆、女性から生まれてくる。であれば、自然分娩を経た人は親族と極めて濃密に接触しており、強い関係性が見出せると言えよう。 親族を感染呪術の対象――『本来は同一であった』と見なしうる範囲の拡張度合いは呪術師としての技量に依存する。 トリシューラであれば三親等以内が『射程範囲』だが、より高位の呪術師は更に範囲を広げら