母さまはいずこにおいでなのでしょう。かの小さき一柱の神が渡った常世の国で、打ち寄せる波の音を聴いておられるのでしょうか。はたまた母なる神のおわします根の国にお隠れになったのでしょうか。月の君がきこしめす夜の国はあまりに暗い。こうしてひとり膝を抱えておりますと、夜の底にひそむもののけたちに素足の先から食われてしまうようで、なんとも寂しい心持ちがいたします。 暗い座敷の中、かつて母さまと身を寄せ合って、児戯めいた夢物語に花を咲かせるのが楽しみだったのを今でもよく覚えております。物語の中で、あるときは母さまが雅やかな姫君となり、あるときは私が貴公子となりまして、あまりに幼くつたない恋物語に夢中になって、うつつの侘しさを紛らわせるのでありました。 平生、私たちと世間をつなぐものはただ野外の景色ばかりでしたが、桜の花の咲くころや、陽を受けた紅葉が明々と輝くさなかに母さまはきまって笛を奏でました。 母
お笑いトリオ「ネプチューン」の名倉潤さんがうつ病のため休養することになりました。この発表の中で所属事務所が「手術の侵襲(しんしゅう)によるストレスが要因」と述べたことで「侵襲とは何?」という疑問を持った方が多いようです。 「侵襲」という言葉は一般的には耳慣れないかもしれませんが、医学では日常的に使われる言葉です。人体には内部環境を一定に保とうという働きがあります。こうした働きを恒常性(ホメオスターシス)というのですが、この恒常性を乱す可能性がある刺激を侵襲といいます。例えば手術、注射、投薬などの医療行為や外傷や感染症などを指します。 元気だった人の自己肯定感の揺らぎ名倉さんは椎間板ヘルニアの手術の経過は良好だったといいます。名倉さんのうつ病発症の経緯の詳細はわかりません。ただ一般的に手術は体に大きな刺激を与えるだけでなく、そのストレスは心にも影響を及ぼします。 一つには、これまで元気で過ご
死者8人・重軽症者約600人を出したオウム真理教の松本サリン事件から今年で25年。事件の被害者で、妻をサリンの後遺症で亡くした河野義行さん(69)は、オウムへの恨みや憎しみはないと公言してきた。教団元幹部への死刑が執行された際には「残念」「悲しい」とも語っていた。なぜ許すのか、許せるのか、を聞いた。 ――事件のとき「松本市の会社員(44)」と報道された河野さんがもうすぐ古希なのですね。 「世の中から自分の足跡を消す作業を始めています。住所は知人にもあまり教えていません」 ――事件を知らない人も増えています。あの夜、妻の澄子(すみこ)さんが口から泡を吹き、全身をけいれんさせているのを自宅で見たのですね。記憶は今も鮮明なのですか。 「ええ。彼女の苦しそうな顔を、リアルに覚えています」 ――サリンは猛毒の神経ガスです。自身も被害に遭いましたね。 「死を意識しました。視力に異常が出て部屋が暗くなり
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