2007年にデビューして以来、純文学とSFの両ジャンルの作品を描いてきた作家、円城塔さん(39)。先月(1月)、3度目の候補となった小説『道化師の蝶』で芥川賞を射止めた。 「ロシア生まれの亡命作家、ウラジーミル・ナボコフ(1899~1977年)は第二次大戦中、今の僕と同じくらいの年で米国へ渡り、ロシア語から英語へと言語を変えながらも自分の思う美しいものを書き続けた。そこにひかれる」 ■「実験してみた」 ナボコフの小説『道化師をごらん!』に献辞とともに書かれた蝶をモチーフにしたという今回の受賞作。どこからともなくひらひらと浮かんでくる人々の「着想」(アイデア)を“蝶”になぞらえ、その“蝶”を捕虫網で捕まえるというエイブラムス氏との出会いから始まる。 「今まで一人の人の言葉を考えることが多かったんですが、最近、いろいろな人がしゃべっている言葉に興味が向き始めた」 ストーリーは、少しずつずれてい