ひと昔前、インターネットで、牛丼屋で「ごちそうさま」を言うとか言わないとかいう話でひとしきり盛り上がっていたことがあったようだけれども、 togetter.com おれは吉野家で祈りを捧げる人をみたことがある。 祈るといっても、まったく大仰なものではなくて、食前に一瞬、軽く手を合わせただけ。ごく自然な動作だった。男性は現場帰りとおぼしき作業服姿で、年の頃は四十か五十、とにかく中年であることは間違いない。日に焼けた肌には、深いシワが刻まれていた。 そのささやかな祈りは、まったくの無言の中で行われたことだったし、無粋な単位で語るならば、せいぜい2秒か3秒くらいの間の出来事だったので、彼を見ていたのは、たぶんおれだけだったんじゃないかと思う。もちろん、何がしか神的な存在が彼の祈りを見届けていた、その可能性は否定できないものの、それを考えることはおれの手には余ることだ。少なくとも現世の基準において