■大傑作も出版当時理解されず 後にも先にもない「前衛」小説 アメリカ文学の金字塔『白鯨』を、読んだ気にだけなっている人は多い。巨大な白鯨に片脚を奪われたカリスマ的な船長エイハブが、捕鯨船を率いて復讐(ふくしゅう)のため世界の海を追い回し、悲劇の結末にのみ込まれる――。グレゴリー・ペック主演の映画などで、あらすじだけは広く知られている。 しかし、これほど読み通しにくい本も、そうは多くない。著者のメルビル自身、作中で「雄大な書を生むには、雄大な主題を選ばなければならない」と書くが、荘重体と評された仰々しい文体は、英語圏の作家にさえ「当惑を覚えないではいられない」(S・モーム)という難しさだった。岡山県の読者・佐々木行夫さん(60)は原書で読んだ猛者だが、「結局2年かかって、意味不明の部分も多々残った」という。 原文の荘重さをよく移した阿部知二訳(1956年)や、平易な日本語に工夫した千石英世訳
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