『女性のいない民主主義』。この新書の一風変わったタイトルが決まったのは、本書の執筆の最終段階である。もともと筆者は、「男性の政治学からの脱却」という、より学術的な性格の強いタイトルを考えていた。というのも、本書は日本の政治を分析する本であるだけでなく、政治学という学問のあり方について考える本でもあるからだ。 日本の政治家や高級官僚に占める女性の割合が国際的に見て極めて低いことは、これまでも様々な人が論じており、さほど目新しい論点ではない。他方、この国の政治体制が民主主義と呼ばれている理由や、そのことが我々の政治に対する見方に与える影響については、あまり議論が行われてこなかった。本書は、この後者の問題に取り組むべく、日本の政治学の教科書で一般的に扱われるような「標準的」とされる概念や理論が、実際には男性の視点に偏ってきたことを、様々な学説の検討を通じて明らかにしている。 とはいえ、筆者は男性