(前回から読む) 空前のヒットとなった「通俗水滸伝」シリーズ 歌川国芳の出世作となった「通俗水滸伝百八人之一個(壹人)」は、さまざまな出会いによって108人の豪傑たちが集まり、不正な権力を挫いて人々を救うという、中国の伝奇小説「水滸伝」に登場する英雄たちの各々の活躍場面を描いたシリーズである。 この錦絵が大評判をとった背景には、当時の文芸界の「水滸伝」ブームがあった。また、その勇壮で緻密な図様は、彫り物(刺青)の流行にも乗じ、「古今稀なる大当り」と評されるほどの人気を集めた。 先ず最初に5図が出版されたと伝えられるが、その後、約10年間、次々と新図が出版され続けた。現在、大判74図が知られており、浮世絵史上初めての大部の武者絵のシリーズとなったのである。 チャンスを得た国芳は渾身の力で筆を揮っている。画面からはみださんばかりの英雄たちが放出する大きなエネルギーは見る者の胸を熱くし、そのダイ
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