私たちは激動の時代を生きている。その認識を日々あらたにしている。思い返せば年が明けたばかりの頃は実にのどかだったな。その後厄禍に見舞われるなど露ほども考えていなかった。 ちょっと暮れから一月の初めがどんなだったか思い出してみる。私はルンルン気分で羊肉のクスクスを作っていた。ビーツが豊作でそれを使ったピンクな料理にのめり込んでもいた。一時帰国した息子のために、車で遠くのケーキ屋さんまで公現祭のガレット・デ・ロワを買いにもいった。切り分けたパイからフェーヴを引き当てた息子は、子どものように喜んで、ずっと金色の紙でできた王冠をかぶっていたっけ。3月に結婚する予定であったから「これは幸先良いぞ」と私も嬉しく思い、しあわせな一年を頭の中で描いていた。しかし前にもお話したが、コロナ禍で結婚式は中止となり、息子夫婦は今も渡航がかなわず離れて暮らす。 10年後、20年後に振り返ってみて、やはり2020年は