(本稿は『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...』のネタバレを含みます。) 一視聴者としてはとても面白かったが、一クリエイターとしては敗北感で打ちのめされた、というのが『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...』(原作:山口悟、監督:井上圭介、アニメーション製作:SILVERLIN、以下はめふら)の感想だ。 私は小説を書いている。小説を書く際には、ハリウッド式の作劇法を使って綿密にプロットを組む。第二幕で持ち上げられてから一気に叩き落とされた主人公は、自分の内的課題を突きつけられて精神的危機を迎えるが、そこで変わることを決意して再起し、敵との最終決戦に……という風に頑張ってストーリーを練り込んでいる。 一方、はめふらのストーリー構造は、毎回、アイデンティティ・クライシスに陥っているキャラがいて、カタリナに肯定されて救われるだけというシンプルなも