「自閉スペクトラム症(以下ASD)の人は共感が苦手だ」と紹介されることがよくあります。確かにこの点について適切に理解することは、ASDの方と上手くコミュニケーションを取る上でとても重要なことです。しかしASDの共感能力というポイントについては、普通思われているよりも注意深く理解する必要があります。 最初に、共感できないということは、喜怒哀楽をはじめとする感情を持っていないということとイコールではないという点に注意が必要です。共感が苦手なASDの方でも、当然ながら楽しいことがあって笑ったり、不快感を表したりすることはあります。逆に、そうした感情が表れてくるからといって、ASDでないとか本当は共感能力が高いとかいった証拠にはなりません。共感できないということは、その人の中に人間らしい感情がないということではないのです。 そうではなく共感能力の欠如とは、他人の感情に触発されて自分も同じ感情が生じ