天野 彩 昨秋、子宮頸がんワクチンを接種した思春期の女の子に重篤な副作用が出やすいという指摘に「科学的な根拠がない」と反論して一躍話題を集めた、医師免許を持つジャーナリスト村中璃子さんの講演を聞きに行った。彼女は接種の副作用とされる症状は元々その年代の少女によく見られるとしてワクチンの接種停止決定を批判した。科学的なデータに基づかない主張には逐一反論してくださいと聴衆の医師らに呼びかけ、講演を終えた。 主張には筋が通っていたが、「科学的に正しい」ことを重視しすぎると、科学の範疇ではない問題を軽視することになりかねないと不安になった。「科学的な根拠がない」とは「今の科学には結論を出すことができない」という意味であり、「正しい」か「正しくない」かを科学には判断することはできず、その材料を与えるに過ぎない。科学的な根拠のない主張を認めないことは、絶対的ではないはずの暫定的な科学の見方を絶対視する