「そういうことだったのか……」彼らは幾度となくつぶやき、時に膝を打った。発売されたばかりのこの本を読んだ、パナソニック元役員たちの反応だ。巨艦企業の停滞は、すべて人事に起因していた。 経営不振の原因はあの人事 日本を代表するエクセレント・カンパニーとして隆盛を極め、長く世界のトップブランドとして君臨してきたパナソニック(旧松下電器産業)が、過去約20年にわたって経営不振に苦しまねばならなかった原因は、ひとえに「人事の乱れ」によるものだった。 背景には、3代目社長の山下俊彦によってはじめられた経営改革を、4代目社長の谷井昭雄が推し進めようとするなか、会長の松下正治との間で激しく対立したことがあった。 松下電器の創業者松下幸之助の女婿でもあった正治は、谷井の改革によって創業家がないがしろにされていると反発。やがてふたりの対立は、経営そのものを揺るがす根深い人事抗争へと発展していったのである。