面白い。月並みだが、あるいは陳腐な言い方だがなどと断るまでもなく、つまり、はばかりなく面白いといえる小説だ。 上・下巻(BOOK1とBOOK2)それぞれ24章ずつ、計48章で完結する。 おお、このヒロイン、必殺仕事人ではないかと驚かされたりして、上巻はミステリアスなエンターティメントとして展開する。 いや、ただのエンターティメントであるはずがない、という徴候は上巻の18章にある。 ジョージ・オーウェルの小説『1984年』にビッグ・ブラザーという独裁者が登場したことが読者に知らされる。スターリニズムの寓話化だったビッグ・ブラザーに対して『1Q84』には「リトル・ピープル」が登場するのだが、まだ読者にはなんのことかさっぱりわからない。 いわゆるムラカミ・ワールドの世界と陥穽に、読者がひきずりこまれるというか落ちこむのは、下巻の13章からである。読者はじゅうぶんに伏線という毒を食っているから、し
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