村上春樹の新作長編『街とその不確かな壁』が新潮社より4月13日に刊行される。『騎士団長殺し』以来、6年ぶりの最新長編だ。 本作について春樹ファンのあいだで指摘されているのは、文芸誌『文學界』1980年9月号に掲載された幻の中編「街と、その不確かな壁」を元にした作品ではないかということだ。同作は1985年に刊行した長編『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の習作としての位置づけでも知られているが、村上は「失敗作」だと捉えており、単行本や全集には収録されなかった。本稿ではその幻の作品の内容を紹介し、特に重要だと思われるポイントを整理したい。 大まかなプロットを見てみよう。主人公の「僕」は18歳の夏の夕暮れ、親密な仲である「君」から想像上の「壁に囲まれた街」の存在を知らされる。本当の彼女はその街にいて、いまの存在は「影」に過ぎないという。そして「君」を亡くした僕は、そこを訪れることとなる
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