→紀伊國屋書店で購入 「カフカ、『変身』に見られる家族の自立」 夏休みといえば宿題、宿題といえば感想文だが、久しぶりに手に取った『変身』は多様な読み方ができる稀有な小説であった。 『変身』は、高校時代に読んだきりだから、内容も漠然としか覚えていなかったが、「目が覚めたら虫に変わっていた」とは、突然、理由もわからず発症していまうALS患者の境遇と酷似している。だから身近な神経難病者のストーリーとして、『変身』を読むこともできなくはない。しかし、それはやめておこう。ここには、家族の変容も描かれている。たとえば93ページ。介護してきた妹の堪忍袋の緒が切れてしまう。 「お父さん、お母さん」ザムザの妹が口をひらいた。ここからストーリーは急転直下の勢いで終局に転じていく。たたみかけるような会話。それまでおとなしく兄の運命を受け入れていたはずの妹が最初に口をひらいた。それを聞いたザムザは心臓に楔を打ち込