それでも、読書をやめない理由 [著者]デヴィッド・L・ユーリン 著/井上里 訳 柏書房 / 1680円 [評者]永江 朗 (フリーライター) ■時代に抗う行為の意義問う ある本のあとがきを読んで苦笑した。そこにはこう書かれていたのだ。 「正直言ってネットの助けがなければ書けなかった。しかし、ネットがなければ、もっと早く書けた。ネットは、ありあまる知識を与えてくれる一方で、惜しみなく時間を奪う」(橋元良明『メディアと日本人』) ぼくも同じことを痛感している。いま書いているこの文章だって、ほんとうはもっと早く書けたはずだ。それがついネットであれこれ調べているうちに…。 本の虫を自認していたはずの著者は、自分が本に集中できなくなっていることを発見する。十五歳の息子が、『グレート・ギャツビー』について話したのがきっかけだ。フィッツジェラルドのこの小説を、息子は学校の授業で読んでいた。 「文学はもう