「女による女のためのR-18 文学賞」という文学賞があることをご存知でしょうか。 新潮社主催の文学賞ですが、少々縛りがあることが特徴です。まず、応募できるのは女性だけ 。そして、「R-18」指定、つまり性をテーマにした大人が楽しめる作品が対象です。「花街」というテーマでおすすめな本を考えたとき、この文学賞の受賞作の中に、最適な作品がひとつありました。 宮木あや子作「花宵道中(はなよいどうちゅう)」主人公は吉原の女郎、朝霧(あさぎり)です。吉原が火事で全焼したため、深川八幡前の仮宅が舞台となっています。あるとき、朝霧は妹女郎と一緒に八幡様の縁日に出かけます。そこで、運命の男に出会います。男は朝霧を女郎と知っても蔑まず、脱げた草履を人込みから探し出してくれます。そして、草履の鼻緒に使われていた青い牡丹の花を見て言います。 「この鼻緒の友禅。俺が染めたんだ、京都で」 自分の草履の鼻緒が、目の前に