*1 メディアが英雄を作り出す手癖、というのがあります。 英雄、というのが大げさならば、うっかりとあらぬところに人を祭り上げてしまうからくり、とでも言い換えてもいいでしょう。 何も今に限ったこっちゃない。人が言葉と意味の動物であることを始めた昔から、あらゆる英雄は語られる存在としてあり続けてきました。それはマスメディアの濃密に張りめぐらされた〈もうひとつの自然〉となったいまどきの情報環境に生きるあたしたちとて、例外ではない。 かくいう立花隆センセイも、今やそういう同時代の英雄のひとりです。 なにせ、「知の巨人」であります。政治から先端科学までを手あたり次第に網羅する何でもありな好奇心に、それを支える日々倦むことなきものすごい読書量を誇る日本屈指のおベンキョ屋。この世知辛いご時世に筆一本であっぱれおっ立てた自前の鉛筆ビルは壁一面に黒猫の顔をあしらったファンシーなもので、中身はあまたの書物と資