ブックマーク / hdipb.hatenablog.com (5)

  • 湊かなえ『往復書簡』[詳細感想版] - 電羊倉庫

    通常版が読んでもらえているので詳細版を作りました。 《構成》 全編が手紙のやり取りで構成された連作短編集。作品ごとに主要キャラクターは入れ替わるけど、登場人物や赴任先の国など、小さなつながりがある。ただ、それも直接関連しているわけではなく、世界観を共有しているという程度。 彼らはそれぞれの過去の「ある事件」を中心に手紙をやりとりし、徐々に事件の真相や登場人物の意外な一面が明らかになっていく。立場や性格によって人物への評価が大きく異なること、そして同じ出来事を経験していたはずなのに、それさえ違う印象をもってしまうことがある。主観の曖昧さ、人や物事の多面性がテーマの作品。 《収録作》 1.十年後の卒業文集 ①登場人物 高倉悦子:放送部。既婚。アフリカ在住だが一時帰国中。悦ちゃん。 谷口あずみ:放送部。婚約者がいる。最初の文通相手。アズ、あずみん。 山崎静香:放送部。浩一と結婚。二番目の文通相手

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  • 最近見た存在しない映画(2022年9月) - 電羊倉庫

    告白―コンフェッション―(2000年、日、監督:川伸治、105分) まずはやっぱりビジュアルが素晴らしい。原作の作風が割と劇画寄りなことを加味しても浅井と石倉のどちらも原作のビジュアルを忠実に再現しているのはもっと評価されるべき。原作はほとんどクローズド・サークルで山小屋で物語が完結するけど、作はけっこうアレンジが入っていて、山に登るより前の人間関係が挿入されている。正直、ちょっと間延びしただけで邪魔だった気はするけど、あれがあったからこそ石倉の激昂に説得力がでている。ほかは特に目立った追加描写はなかったと思うけど、さゆりの顔が意図的に隠されていたのはどういうことだったんだろう。あまり意味がある演出には思えなかったけど、さすがに無意味にあんなことするわけないからなあ……。 原作の印象的なセリフ回しはたいぶマイルドになっているのがちょっと残念だけど、原作の良さは十分活かされている。山小

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  • NHK『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』[色とりどりの作品を押さえた良質なドラマ作品] - 電羊倉庫

    原作にかなり忠実なドラマ。15分という尺も、間延びはしないけどアレンジの幅が程よく残っていて絶妙。素晴らしい。気軽に観れる明るい作品、思想色が強く々とした作品、意外なオチがついた作品、雰囲気を楽しむ作品と、星新一*1の作品の中でも色とりどりに取り揃えられている。 星新一作品のパブリックイメージは「どんでん返しのオチがついたスマートなショートショート」だと思うけど、1000編以上も書いていれば当然そうではない作品も存在する。何とも言えない雰囲気や特異な状況を楽しむ作品もけっこう多い。雰囲気でいえば「冬の蝶」や「月の光」なんかが比較的有名で、ドラマの作品で言えば「薄暗い星で」が該当する。そういう作品もキッチリ映像化してくれたのは英断……はちょっと言い過ぎだけどかなり良い判断だったと思う。 事前告知番組でAマッソの加納さんと東野幸治さんが「コントっぽい」と言っていたけど当にそう思う。コントに

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  • 漢の歴史と正当性の感覚 - 電羊倉庫

    最近、渡邉義浩『漢帝国―400年の興亡』を読んだ。 漢帝国―400年の興亡 (中公新書) 作者:渡邉 義浩 中央公論新社 Amazon 歳をとってからのお勉強*1は「何だっけこれ」と「誰だっけこいつ」との闘いになる。おれも一応の義務教育と一通りの受験勉強を経験したけれど、身についたはずの知識は無残にも鉱滓と化し辛うじて頭の片隅にへばり付いているといった始末で、そうでなくても基知識が高校までの基礎教育と大学一年で受けた教養講座程度なものだから、やっぱりよくわからなくなることも少なくない。歴史系のでも西洋史は概説書でも苦戦するし、理科系にいたってはブルーバックスだから大丈夫だろうと手に取った時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体 (ブルーバックス)が想像よりちゃんと物理学をやっていて半分もいかずに挫折し読み流してしまったり、苦手を克服しようと買った*2数学序説 (ちくま学芸文庫)

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  • フィリップ・K・ディック『トータル・リコール』[娯楽色が強くすっきり楽しく読める短編集] - 電羊倉庫

    「トータル・リコール」(We Can Remember If You Wholesale)翻訳:深町眞理子 現実崩壊。旧題の「追憶売ります」のほうが洒落てるけど、やっぱり映画にはあやかっていかないとね。映画はリメイク版しか観ていないし記憶もちょっとあいまいだけど、かなり原作とは違っていたと思う。少なくともこの短編小説でのアクション要素は希薄で、ほとんどが「リカル株式会社」と主人公の自宅で完結する。もし原作をそのままやるならむしろ舞台演劇のほうが向いているような気がする。小難しい要素はなくオチも明快ユーモラスで気軽に読める上に、事実が二転三転するというディック的な現実ぐらぐら感も味わえる、という良作。ちなみに書の表紙には、地球に引き戻すDOWN TO EARTH、惑星間刑事警察機構INTERPLAN、火星MARSー地球TERRA、リカル株式会社REKAL,INCORPORATEDなど、

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