釣り師といいますのは、他に気の効いた芸などなかなか持ち合わせぬところで、そこはやはり釣りをするので御座います。 これを世間様では褒め言葉で「馬鹿の一つ覚え」などと申しまして、賞賛するところで御座いまして、今日も埒の明かぬことに精出してまいります。 釣場と言うのは実に厄介なところで御座いまして、ただ魚を釣ればいいというものでもございません。 そこには人知れず、釣り師同士の密かな戦いなどと言うものが有りまして、お互い静かな、駆け引きと戦いを繰り広げているもので御座います。つまり見えざる足の引っ張り合いで御座います。 いつ頃なのか戦にしろ遊びにしろ競うという術を身に付けまして、悲惨なものから悔しい物まで様々、人様と言うのは競うものです。 釣場でも魚を釣るという、至って個人的な事情に加えて、人様より釣りたいと言うのは奥底に抱えておる物で御座います。 競う上でなんと言っても明確に優劣が出ますのは、釣