ゴーレム伝説、そして「ゴーレム的なもの」が描かれた文学作品などを概観し、「ゴーレム的なもの」とは一体何か、そして「人間圏」の境界について考える。 人間以下の人間として「ゴーレム」は捉えられるが、この後、人間圏の境界ないし人間以下の生物について考えるという流れで、『動物に魂はあるのか』へと繋がることになる。 第一部第一章 伝説の歴史的点描 ここではまず、『サンヘドリン篇』や『セーフェル・ハ・バヒール』といった古代・中世ユダヤの文献から、16世紀以降のゴーレム伝説を概観している。 16世紀に、〈プラハのマハラル〉と呼ばれた高名なラビがいて、史実と伝説が入り交じっていくうちに、18世紀から19世紀にかけて必ずゴーレムと結びつけられるようになった、と。マハラルが活動していた時期というのは、あのルドルフ二世の治世でもあり、この二人は実際に会見もしているらしい。 筆者は、マハラルとファウスト博士を比較