レフ・ヴィゴツキー 柴田義松・根津真幸(訳) 1971 芸術心理学 明治図書出版 社会文化的アプローチに基づいた心理学は、人間に固有な精神のはたらきを明らかにすることを目的にすえる。この目的を達成するうえで社会文化的アプローチが前提とするのは、そうした精神のはたらきは人びとの社会的な結びつきに発生的起源をおくというアイディアである。まずこのことを確認しておきたい。 ポイントは3つある。第一に、人間固有の精神機能は自然の用意した要素同士が発生的に新しく結びついた結果として生まれたものであること、第二に、そうした結びつきは人為的に利用されるということ、第三に、ある人が人為的に利用した結びつきは、また別の人によって再利用される可能性があるということである。 精神のはたらきにもいろいろある。系統発生を前提すれば、他の生物種と共通する基盤から生まれたグループがまず考えられる。さらに、人間という種にお