2007年2月7日のブックマーク (43件)

  • 超映画批評『戦争のはじめかた』70点(100点満点中)

    戦争のはじめかた』70点(100点満点中) 登場する戦車は、なんと個人が所有するドイツ・イギリス合作の反戦ブラックコメディ。トロント映画祭で絶賛された直後にアメリカで同時多発テロが起こり、その関係で5回も全米公開が延期されたという、時代に翻弄された作品。 舞台はベルリンの壁崩壊直前の西ドイツ、駐留米軍のとある補給部隊。平和でやることのないこの軍隊は、倫理観がすっかり麻痺してしまっている。主人公のエルウッド(ホアキン・フェニックス)は、物資をちょろまかして横流ししたり、軍の機材でヘロインを精製してブラックマーケットに流すなどやりたい放題だ。そこにやってきたのが新任の鬼軍曹(スコット・グレン)。今までと違い徹底的に不正を取り締まる彼に対し、エルウッドは彼の娘(アンナ・パキン)をナンパして憂さ晴らししようとするのだが……。 なぜ『戦争のはじめかた』がアメリカで公開延期されたかといえば、徹

  • 超映画批評『コニー&カーラ』65点(100点満点中)

    『コニー&カーラ』65点(100点満点中) 笑いと涙の絶妙なバランス 製作費の50倍近くの興行収入を上げ、2002年のアメリカ映画界を揺るがす大ニュースとなったコメディ映画『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』の主演&脚のニア・ヴァルダロスが、再び主演と脚を担当して作った作品。 将来の大スターを夢見る売れない女性デュオの二人が、偶然マフィアの殺人現場を目撃、逃亡生活をするはめになる。二人は正体を隠すべく、女装した男性(ドラッグクイーン)の歌手に化け、毎夜ゲイクラブのショーに出て生活費を稼ぐが、女性らしいよく伸びる歌声と毒舌トークで、予期せぬ大人気となってしまう。 上記ストーリーも、最後に感動シーンが用意されているところも『天使にラブソングを…』(92年)を髣髴とさせる。そんな『コニー&カーラ』独自の特徴としては、ノーマルな女性がオカマに化けることで、マイノリティの苦労を身をもって知る

  • 超映画批評『砂と霧の家』75点(100点満点中)

    『砂と霧の家』75点(100点満点中) 的確な描写とスリリングなストーリーで見ごたえ十分 一軒の家を巡る争いと人間模様を描いた同名小説映画化。演技派の役者をそろえ、見ごたえのある人間ドラマを展開する。 夫と別れたショックで茫然自失の日々を送る主人公(ジェニファー・コネリー)は、亡き父が残した海辺の美しい家で一人暮らしている。ところがわずか数百ドルの税金を滞納したため、当局に家を差し押さえられてしまう。弁護士に相談した結果、行政の手違いが判明したものの、そのときすでに家は競売にかけられており、イランからの移民一家に買われてしまっていた。 家の新所有者となった家族の長たる男(ベン・キングズレー)は、イランで軍の高官をつとめていたためプライドが高い。彼は家族とともに亡命してきたのだが、米国では最底辺の肉体労働者として屈辱の日々を送っていた。だから全財産をはたいて買ったこの家は、故郷と同等の暮ら

  • 超映画批評『コラテラル』85点(100点満点中)

    『コラテラル』85点(100点満点中) トム・クルーズ主演映画としてはパーフェクト 人気スターのトム・クルーズが悪役を演じる犯罪アクション&サスペンス。 ロスで働くタクシードライバー(ジェイミー・フォックス)は、将来メルセデスを購入し、リムジン会社を設立するのが長年の夢。そんなある晩、一人の紳士(T・クルーズ)を乗せると、彼は破格の値段で一晩タクシーを借り切ると言う。 実はこの、トム・クルーズ演じる金持ち風の男は殺し屋で、一晩に5人を殺すという大忙しの仕事のパートナーとして、話の合うこの黒人運転手を見込んだのだ。やがて男の正体を知ったドライバーはどういう行動をとるのか? はたしてこの有能な殺し屋は仕事をまっとうできるのか。物語は予測できない方向へと転がって行く。(ちなみに後半のストーリーについて、プレス関係者には緘口令がしかれている) 早く先が知りたくて仕方がないほどストーリーは面白いし、

  • 超映画批評『ソウ/SAW』90点(100点満点中)

    『ソウ/SAW』90点(100点満点中) 低予算なのに年間ベスト級の大傑作 新進気鋭の監督作品が集まるサンダンス映画祭でも大好評だったサスペンスホラー。今週は、今年で一番多数の傑作が揃った激戦区の週であるが、中でも私がイチオシにしたいのがこの「ソウ/SAW」だ。 目がさめるとそこはだだっ広いバスルームのような部屋。自分の足は太いチェーンで部屋の隅につながれている。部屋の対角線上には見知らぬ男が同じようにつながれている。そして恐ろしいことに、二人の中間点、部屋の中央部には、頭を打ち抜かれうつぶせに倒れた死体が横たわっていた。なぜこんな場所にいるのか、さっぱりわからないまま、二人に「6時間以内に相手を殺さないと、2人とも死ぬ」とのメッセージが告げられる。 低予算なのに安っぽさはなく、ものすごい面白さ。今年のホラー、サスペンスの中ではダントツの傑作の登場だ。こんなに恐ろしい映画は数年に1あれば

  • 超映画批評『ターンレフト ターンライト』85点(100点満点中)

    『ターンレフト ターンライト』85点(100点満点中) よくぞロマコメでここまでやった、すごすぎる 台湾の絵の原作を、金城武主演で映画化したラブストーリー。ワーナーブラザーズ映画初の中国語作品であり、力の入った一。 主人公のバイオリニスト(金城武)とヒロインの貧乏翻訳家(ジジ・リョン)はアパートの隣同士──だが、お互いの存在はまだ知らない。そんな二人が町で出会い、電話番号を交換したのはよいが、翌日そのメモは雨でにじんで読めなくなっていた。二人はこの出会いに運命を感じて、お互い必死に相手の居場所を探す……隣同士だとは気づかないまま。 これはすごかった。最初はもうなんてアホな話かと、天下のワーナーブラザーズも、ついにこんなくだらない映画を出してきたかと思ったが、(私の想定する)「ターンレフト ターンライト」の正しい楽しみ方を理解してからはその印象はサイコーへと変わった。平たく言えば、この映

  • 超映画批評「トルク」90点(100点満点中)

    『トルク』90点(100点満点中) 大爆笑、最高のバイクアクション映画 アメリカのバカ若者たちが大型バイクで暴走する様子をけれん味たっぷりに描いたアクションムービー。 主人公(マーティン・ヘンダーソン)は、恋人とやり直すためこの町に戻ってきた。ところが町のバイカーギャング(暴走族みたいなもんだ)の中ボスとトラブり、そいつに大ボス(アイス・キューブ)の弟殺しの濡れ衣を着せられてしまう。 私が『トルク』の試写を見たのは、なんと今年の1月だ。著名なスターが出ているわけでもなく、監督も新人。要するにまったく売れる要素がないということか、公開も延び延びになってはや10月である。しかし、この映画ほど私が公開を望んでいた作品もない。早く大画面といい音響でもう一度見たいと願っていた一なのである。 『トルク』は、「スピード感のあるバイクアクションの映画」と聞いて、あなたが想像する10倍はぶっ飛んだ映画だ。

  • 超映画批評『恋の門』60点(100点満点中)

    『恋の門』60点(100点満点中) 満遍なくディテールにこだわったマニアックな映画 「劇団大人計画」の松尾スズキ初監督作品。羽生生純の同名コミックを松田龍平主演で映画化した。 二十歳になってもいまだ貧乏童貞の蒼木門(松田龍平)は、石に漫画をかく自称“漫画芸術家”。ひょんな事から出会ったOLの恋乃(酒井若菜)といい感じになるが、彼女は実は超オタクでコスプレイヤーだった。門は同じ“マンガ”でも180度違う恋乃の世界に衝撃を受けながらも、なんとか歩み寄ろうとするが……。 主人公の門をはじめ、登場してくるのは誰も彼もナンセンスなキャラクター。前半はコメディタッチで、彼ら“変な”登場人物の様子を描く。映画というより演劇をみている気分で、大笑いしながら楽しむことができる。このへんの笑いのセンス、テンポのよさはさすが松尾スズキといったところか。 特に、ヒロイン恋乃の趣味である同人マンガやコスプレ、いわゆ

    sibirekurage
    sibirekurage 2007/02/07
    原作:羽生生純
  • 超映画批評『堕天使のパスポート』80点(100点満点中)

    『堕天使のパスポート』80点(100点満点中) オドレイの熱演とせつないラストが感動的 『アメリ』の、人々に幸せを与えるヒロイン役で人気爆発したオドレイ・トトゥ主演のイギリス映画。彼女が、慣れない英語のセリフで汚れ役を熱演、作品自体はアカデミー賞のオリジナル脚賞にもノミネートされた。 舞台はイギリスのロンドン。トルコからの不法移民であるホテルメイド(A・トトゥ)は、同じ職場で働くアフリカ系黒人男性と、生活費の節約のため同居している。そんなある日、彼が職場のホテルで“あるもの”を見てしまったため、二人の運命が大きく転落して行く。 社会の底辺で過酷な暮らしを続ける不法移民の登場人物たちによるシリアスなサスペンスドラマ。「天使のような」誠実な男と、気高いイスラムの女。魅力的なキャラクターたちが、あまりに残酷な仕打ちを受けながら、それでもはかない夢をみる姿が絶望的に悲しい。 序盤は英国の下層社会

    sibirekurage
    sibirekurage 2007/02/07
    主演:オドレイ・トトゥ
  • 超映画批評『ドット・ジ・アイ』70点(100点満点中)

    『ドット・ジ・アイ』70点(100点満点中) 事前に必要な情報はこれだけで十分 イギリス=スペイン合作のミステリードラマ。「dot the i」とは、「細かいトコに気を使う」という英語の慣用句からきている。この大胆なプロットのミステリーにふさわしい、意味深なタイトルだ。 主人公カルメンは、ストーカーから逃げてきたロンドンで、優しくてハンサムなお金持ちの男性と婚約を交わす。ところが、その晩開かれた女友達とのパーティで出会った男性キットに心引かれてしまう。さらに、それと前後して彼女は、何者かに監視されているような不気味な不安を感じ始める。 ヒロインが女友達と仮装してバカ騒ぎするパーティは、イギリスで俗に「ヘンナイト・パーティー」と呼ばれるもので、この映画では主人公の独身最後のキスを、そのレストランに偶然来ていた男性の誰かを選んでするという企画になっている。そして、その名誉ある相手に選ばれた男性

  • 超映画批評『マッハ!』90点(100点満点中)

    『マッハ!』90点(100点満点中) アクション映画史に残るであろう強烈な個性の一 タイの元スタントマン俳優トニー・ジャー主演のリアルアクション映画。今後の映画界を変える勢いを感じさせる、ものすごい一である。 タイの田舎のある村の守り神“オンバク”像の首が何者かに持ち去られた。村の長老は像の奪回のため、村一番のムエタイの使い手である若者(トニー・ジャー)を送り出す。 「一つ、CGをつかいません!」「二つ、ワイヤーを使いません!」「三つ、スタントマンを使いません!」「四つ、早回しを使いません!」 という、時代に逆行した強烈なキャッチコピーによる予告編を初めてみたときは、「どうせチープでしょぼいおバカ系のC級アクション映画だろう」とたかをくくっていた。(公式サイトで見られる特報と予告編は爆笑もので必見だ) ところがどっこい、映画が始まると、そこには観客の予想をはるかに超えた物アクションの

    sibirekurage
    sibirekurage 2007/02/07
    主演:トニー・ジャー
  • 超映画批評『ウォルター少年と、夏の休日』70点(100点満点中)

    『ウォルター少年と、夏の休日』70点(100点満点中) 男性にこそ見てほしい、少年と老人の友情ドラマ 『シックスセンス』の天才子役ハーレイ・ジョエル・オスメントが、二人のベテランオスカー男優と競演した人間ドラマ。 舞台は1960年代のテキサス。主人公は、老人二人暮らしの親類宅に母の勝手な都合で一夏預けられることになった少年。父親がいない彼は、気難しい二人の老人の態度に最初は戸惑うが、屋根裏で見つけた古い写真についての思い出話を聞き出しながら、やがて心を通わせていく。 父親を知らない少年は、男らしい生き方と人生哲学を初めて彼らから学び、長いこと二人暮らしを続けてきたジジイたちは、その排他的な生活に少年という全く新しい風を入れることによって、忘れていた大切な価値観を取り戻す。3人の感動的な成長物語である。 この3人の演技合戦が当にすばらしい。実力派ベテラン俳優であるジイ様二人は当然として、彼

  • 超映画批評『海猿』75点(100点満点中)

    『海猿』75点(100点満点中) ありそうでなかった良質のアクションエンターテイメント 海上保安庁の海難救助エキスパート“潜水士”を目指す若者たちの青春を描いたアクション・エンターテイメント。週刊ヤングサンデーに連載され大人気となった佐藤秀峰の原作を映画化したものだ。 ところで、先日このページで同じ日製青春映画の『下物語』を紹介したところ、実際に見た方たちから「当にすばらしい映画だった」というメールを何通もいただいた。「最近の邦画はつまらないと思っていたがその考えが覆った」という声を聞いたときは、私も嬉しかった。 そんな『下物語』に続き、オススメするのがこの『海猿』である。この映画は、100%エンターテイメントに徹した作品で、製作費は比較にならずとも、その出来は場ハリウッドの大作映画にも劣らない。 空撮やダイナミックな構図を多用した映像、海上保安庁全面協力による物の艦船の迫力は

  • 超映画批評「ペイチェック 消された記憶」75点(100点満点中)

    『ペイチェック 消された記憶』75点(100点満点中) 見ごたえあるアクションスリラー 近未来を舞台にしながら、ミステリ的な謎解きをメインに据えたSFアクション映画SFというとちょいとマニアックというか、一部のファン向けのイメージがあるが、『ペイチェック』はむしろスリラー&アクション映画としての印象が強く、一般のお客さんにもお奨めできる作品だ。 退屈な部分はなく、先が気になるストーリー展開は息をつかせない。せっかちな人に向く映画だ。特に、クライマックス以下の二転三転する展開は満足度が高い。キャストやスタッフをみる限り、お話の「中身」でうならせる映画だとは想像もしていなかったので、なんだか得をした気分だ。 たくさんのアイテムは、先の展開をいろいろと想像させる楽しみがあるし、それらを使っていく過程には伏線も多数ばらまかれている。数段構えのラストでそれらが一気につながるのを見ると、まさに拍手喝

  • 超映画批評「マスター・アンド・コマンダー」75点(100点満点中)

    『マスター・アンド・コマンダー』75点(100点満点中) 男たちの熱いドラマが見所の海洋スペクタクル 世界的なベストセラーが原作の海洋冒険歴史大作。帆船時代の海戦や船内生活を、ディテールにこだわった格的な映像で見せてくれる。 ストーリーは、圧倒的に有利な装備を持つ敵アケロン号を拿捕する任務を預かったサプライズ号クルーが、常勝不敗のカリスマ艦長のもと、一致団結して戦うという展開。荒くれたベテランクルーに混じって士官候補生の10代前半の少年たちも乗り込むが、海の上では大人と同じ仕事を堂々とこなす。彼らは、見た目の幼さとは裏腹に、腹の据わった一人前の軍人だ。 ほとんどがこの帆船内で繰り広げられるドラマであり、そこに女性の登場人物は一人も出てこない。今どきは珍しい、男たちの骨太なドラマだ。厚い信頼と友情が、そこには描かれている。 オスカー常連のラッセル・クロウが演じる艦長と、個性派ポール・ベタニ

  • 超映画批評「ドッグヴィル」85点(100点満点中)

    『ドッグヴィル』85点(100点満点中) 奇抜なアイデアを見せるための映画になっていない点がよい カンヌ映画祭を騒然とさせた話題作。何がビックリかというと、そのセット。だだっ広い体育館みたいな場所の床に、なんと白線を引いただけ。各区画には「誰々の家」などと書いてあり、椅子など最小限の家具だけが置かれている。壁や屋根は一切無い。その家に入るときは、存在しない「ドア」を俳優が演技だけで表現して開けて入って行く。 ここで3時間(177分)、9章立ての物語が展開する。考えただけで退屈しそうな気がするがさにあらず。非常にエキサイティングなドラマが繰り広げられる。見た目のほうも、カメラアングルや光の具合等でメリハリをつけ、飽きさせない。セットがシンプルな分、それ意外の部分で相当工夫を凝らしているのがわかる。 終わってから考えてみると、この舞台劇のような奇抜な演出アイデアは必然だったと感じさせる。単に奇

  • 超映画批評「ニューオーリンズ・トライアル」85点(100点満点中)

    『ニューオーリンズ・トライアル』85点(100点満点中) 緊張感が途切れぬ良質なサスペンスドラマ 見応えのある法廷サスペンスもの。演技派で知られる2大スターがはじめて競演した。 さて、法廷劇といえば、根強いファンが存在する定番ジャンルであるが、この『ニューオリンズ・トライアル』は、ちょいと趣向が変わっている。通常このジャンルは、法廷での弁護士と検事(もしくは敵側弁護士)の激しいバトルというのがメインのお楽しみだろう。もちろんそれはそれであるのだが、作では一方の陣営に、陪審コンサルタントなる聞きなれない職業の人物が登場する。 アメリカの裁判は陪審制(12名)で知られるが、多数の陪審員候補者の中から、自陣営に有利な陪審員を調べるのがこの専門家の役目だそうだ。この職種自体は実際に存在するものだが、映画の中では盗聴やら盗撮、尾行などの裏工作を駆使して候補者の思想・心理等を調べ上げ、自分たちの陣営

    sibirekurage
    sibirekurage 2007/02/07
    出演:ジョン・キューザック、ジーン・ハックマン
  • 超映画批評「シービスケット」90点(100点満点中)

    『シービスケット』90点(100点満点中) 圧倒的な映像に興奮し、感動的な物語に涙する アメリカの大恐慌時代に実在し、庶民の希望として愛された競走馬シービスケットと、その騎手ら3人の男たちの半生を描いた感動ドラマ。 世の中には超大作といわれ、派手な映像をウリにする映画が数多くある。だが、純粋に映像のパワーのみで感動させてくれる作品など、いったいいつくあるだろう。『シービスケット』は決して超大作とはいえない映画だが、その映像の迫力、観客の心に訴えかけるパワーは紛れもない一級品だ。 『シービスケット』のレースシーンの迫力は、工夫されたカメラワークとそれにシンクロする見事な音響、思いきり感情を揺さぶる音楽によって我々を圧倒する。ただの競馬の場面が、ここまでのスペクタクルになるとは、見る前は予想だにしなかった。 たとえば実際競馬場に足を運ぶと、馬たちの走りが地響きとなって腹に響き、えもいわれぬ爽快

  • 超映画批評「DEAD LEAVES」70点(100点満点中)

    『DEAD LEAVES』70点(100点満点中) つまらない部分がまったくないあっという間の53分 わずか53分間の、主にレイトショーで興行されるアクションアニメーション。エログロたくさんありという、まさに不純なオトナ向きの内容だ。原色使いでオシャレなキャラクターデザインは、大人向けアニメというジャンルにつきまとう暗さをまったく感じさせない物で、仲のいいカップルのデートにも向く一品である。適度なセクシーさが夜見るにふさわしい。 監督さんも、「酒を飲んでから見てください」と、なんだかレイトショー作品のときに私がいつも言っているようなことを言っている。それほど、ばかばかしい笑いに満ちた作品というわけだ。 53分間は、すべて笑いとアクションに費やされ、無駄なシーンは1秒として存在しない。日の誇るリミテッドアニメ独特のその恐るべきスピード感、心地よいテンポに存分に酔える力作である。全部のシーン

  • 超映画批評「チャーリーと14人のキッズ」75点(100点満点中)

    『チャーリーと14人のキッズ』75点(100点満点中) フェミニズム先進国が描く、家庭の大切さ エディ・マーフィ主演のホーム・コメディ。リストラされたエディが保育園を開園して、個性豊かな子供たちに翻弄されるお話である。家族向けに作られた心温まるコメディドラマで、エディ・マーフィはお得意のマシンガン・トークを封印し、真面目にドラマを演じている。日語吹き替え版も同時に公開されるので、子供連れの皆さんも安心だ。 『チャーリーと14人のキッズ』には、一般的な家族連れの観客がコメディに求めるすべてがそろっているといって良い。健全で毒のない笑い、分かりやすい演出とストーリーとテーマ、そしてラストに気持ち良く流せる感動の涙、である。当然米国では大ヒット。すでにパート2の製作も決定している。 こうしたアメリカ映画を見ていつも思うことは、子役たちがとても溌剌として素晴らしい演技をしているということである。

    sibirekurage
    sibirekurage 2007/02/07
    主演:エディ・マーフィ
  • 超映画批評「MUSA─武士─」70点(100点満点中)

    『MUSA武士─』70点(100点満点中) わかりやすいキャラたちがわかりやすいストーリーを突っ走る大衆娯楽映画 大きなスケールと迫力のアクションで、大ヒットを記録した韓国映画。 『MUSA武士─』は、邦画ではあまり見られない、徹頭徹尾大衆娯楽に徹した作品である。2時間13分、余計な退屈ドラマへ脱線することは一切なく、凄みのある映像と単純なストーリーで一気に見せる豪快な作品である。深みはないがインパクトは十分。日でもこういうのを作ればいいのにとつくづく思う。 ストーリー展開は、『七人の侍』から綿々と続くコテコテのパターンで、いい奴が仲間のために一人一人倒れていくというわかりやすいもの。主役の2人には飛び切りハンサムな役者をそろえ、『ロード・オブ・ザ・リング』のレゴラスそのまんまなキャラもしっかり配置するなど、大変にわかりやすいキャラの立たせ方が微笑ましい。 戦闘シーンはタガの外れたよ

  • 超映画批評「ブラウン・バニー」80点(100点満点中)

    『ブラウン・バニー』80点(100点満点中) 70分間の退屈は、すべて最後の10分間のための布石だった ミュージシャンや画家としても名をはせるヴィンセント・ギャロ監督による、一風変わったロード・ムービー。今週は、年間ベストクラスの『フォーン・ブース』という映画が公開されるが、それに匹敵するほどのオススメ作品がもう一ある。それがこの『ブラウンバニー』だ。 映画が始まると、一人の男が出てくる。どうやらこの主人公はバイクレーサーらしい。男はレース参戦のため、アメリカ大陸を横断するように移動して行くが、カメラはただそれを淡々と追って行くだけである。 セリフもほとんど無く、説明的なシーンもまったく無い。観客には、この主人公にはデイジーなる女がいること、そして、どうやら何かに悩んでいるらしい、ということだけが、彼の表情やわずかなセリフ、そして挿入歌の歌詞(わざわざ字幕を振っていることから、歌詞自体も

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    sibirekurage 2007/02/07
    監督:ヴィンセント・ギャロ
  • 超映画批評「フォーン・ブース」90点(100点満点中)

    『フォーン・ブース』90点(100点満点中) 年間ベストクラスの傑作サスペンス 映画が、電話ボックスの中だけで展開されるという、斬新なアイデアのシチュエーション・スリラー。映画の中と実際の時間の経過がシンクロするつくりになっている。 それにしてもすごい映画である。電話ボックスひとつで、立派に映画を成立させてしまった。『フォーンブース』は、制約だらけのちっぽけな舞台へ、これでもかというくらい、たくさんのアイデアをつめこんだ、一級のサスペンスだ。その切れ味鋭い着想と出来映えには、ある種の嫉妬を覚えるほど。 脚家によると、メインアイデア自体は20年も前に浮かんだものだという。そして最近、突然プロットを思いつき、わずか1週間で脚を書き上げたのだそうだ。なるほど、そう言うものだろうと思う。長年寝かせてきたアイデアと、ストーリーの材料となる数々の断片が、あるときを機会に一気に組みあがるというの

  • 超映画批評「東京ゴッドファーザーズ」80点(100点満点中)

    『東京ゴッドファーザーズ』80点(100点満点中) 非常にクォリティの高いアニメ、クリスマスにぴったりなおとぎ話だ 『パーフェクトブルー』『千年女優』と、良質なアニメーション作品を送り続けている今敏監督の最新作。クリスマスの夜、ホームレス3人組が捨て子を見つけ、その両親を必死に探す、笑いと感動の物語。 アニメーション自体の製作は、マッドハウスというプロダクションが行っている。ここは世界的にも評価の高いところで、『アニマトリックス』や『メトロポリス』といった作品を見れば、その技術力の高さがわかると言うものだろう。『東京ゴッドファーザーズ』も、全米配給を視野に入れて作ったというだけあって、ジブリ作品と肩を並べるほどクォリティの高い、すばらしいアニメーションとなっている。まさに、日アニメここにあり、と言った感じである。 ストーリーは、「奇跡」をテーマにしたもので、下手をすると「あまりに都合が良

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    sibirekurage 2007/02/07
    監督:今敏
  • 超映画批評「アイデンティティー」75点(100点満点中)

    『アイデンティティー』75点(100点満点中) 最後の1分まで気が抜けない抜群の面白さ 仰天な結末が話題の、ミステリドラマ。 あなたがミステリファンならば、『アイデンティティー』は最高の映画だ。この映画は、ロジカルに推理を進めながら見ている観客が、最後に鮮やかに騙されて、完全敗北を味わう快感を得られる映画である。(騙される快感こそ、ミステリファンがもっとも期待する要素でしょう?) かくいう私も、画面の端々の怪しげなヒントを見逃さず、論理的に推理しながら、結末を先に言い当ててやろうと気合を入れて鑑賞したくちである。そして後日このサイトで、「ミステリのクセに結末がバレバレだぜ」と得意満面で報告してやろうというわけである。その勇姿を想像して、一人ワクワクしていた。 結果、コロっと騙された。自分、バカ過ぎ。無論、人はロジカルに推理を進めていったつもりだったのだが、完全にミスディレクションに引っか

  • 超映画批評「ティアーズ・オブ・ザ・サン」70点(100点満点中)

    『ティアーズ・オブ・ザ・サン』70点(100点満点中) これだからアメリカという国が私は好きだ ブルース・ウィリスとモニカ・ベルッチ2大スター競演の軍事アクション&感動ドラマ。 いやー、これは凄い映画であった。私達のように、毎日3も4映画を見ていると、大抵のものには心を動かされる事も無くなってしまうのだが、『ティアーズ・オブ・ザ・サン』は、久々に「これだよこれ!」と叫びたくなる作品であった。 ブルース・ウィリス率いる特殊部隊SEALSが、ある女性医師(モニカ・ベルッチ)を戦地から救出せよとの命令を受ける。ところが、彼女のもとにいる、あわれでいたいけな現地民(女子供&年寄り)たちを見捨てられず、彼らはなんと司令部からの命令を無視し、命を捨てる覚悟でつれだす事を決定するのである。 ちなみに、この映画におけるいたいけな現地民とはキリスト教徒で、武器を持っていない彼らを大虐殺する憎き悪者達は

  • 超映画批評「マッチスティック・メン」85点(100点満点中)

    『マッチスティック・メン』85点(100点満点中) これこそ完璧な脚だと唸らせる 神経症気味でチックに悩む詐欺師と、突然現れた14歳の娘を中心に描かれるドラマ。メインキャストの素晴らしい演技力と、恐るべき完成度の高いストーリーで、まれに見る傑作にしあがった。 笑いあり、スリルあり、アクションあり、そして心震わせる感動ありと、『マッチスティック・メン』には、まさにエンターテイメントの全てがある。 このサイトの趣旨に100%合致した、非常にクオリティの高い娯楽映画である。これをみて頂ければ、私がこのサイトの読者の皆さんに、どういう映画をすすめたいのか、どういうポリシーで運営しているかが、きっとわかってもらえると思う。 病的な潔癖症に悩む詐欺師ロイ(ニコラス・ケイジ)は、相棒のフランク(サム・ロックウェル)と仕事のほうでは日々成果を上げている。そんな2人の前に突然現れた、ロイの実の娘アンジェラ

  • 超映画批評「ノックアラウンド・ガイズ」65点(100点満点中)

    『ノックアラウンド・ガイズ』65点(100点満点中) 実は面白かった、マフィア版・はじめてのおつかい ハリウッド新ハゲ御三家の一人、ヴィン・ディーゼル(『トリプルX』)が出演するクライムムービー。一言でこの映画を説明するなら、「マフィア版・はじめてのおつかい」である。おつかいの途中で主人公のさっちゃん(5歳)が、あわれ50万ドルを落としてしまいさあ大変、というストーリーである。ヴィン・ディーゼル氏は、弱り果てたさっちゃんを助け、なんとかお金を取り戻そうと頑張る親友役で出演する。 そんなわけで、肝心のディーゼル氏は、どう考えても主演とはいえないのであるが、この映画にはそこしか売りがないためか、まるで彼の主演映画であるかのように宣伝されている。パブリシティ担当者の苦悩がかいまみえる瞬間である。 とはいえ、さすがは新御三家の一画、ヴィン・ディーゼルである。そんな脇役でも、1番目立っているのはさす

  • 超映画批評「クジラの島の少女」85点(100点満点中)

    『クジラの島の少女』85点(100点満点中) 主役の少女の存在感が、観客を圧倒する ニュージーランドの原住民、マオリ族の族長の一族にうまれた少女を主人公に、男系社会での古い伝統への挑戦と、少女の成長を描く感動物語。 映画が始まって10分もすれば、この映画には“力”がある、と感じることができるだろう。スクリーンから溢れるエネルギーに観客は圧倒され、一気に引き込まれることが確実な、素晴らしい映画である。 古い伝統にこだわり、せっかく生まれた赤ちゃんをすら、それが女だと言うだけで嫌悪する祖父。我々の感覚からすればどうしようもない、ただの頑固親父に過ぎないこのキャラクターだが、単純な悪役というわけではない。 そんな祖父の仕打ちに、1度も泣かず、ただ憂いを帯びた瞳でみつめる主人公の少女は、つまるところこの祖父を愛している。少女は決して逃げたり諦めたりせず、古い伝統さえ受けいれようと努力し、厳しい昔気

  • 超映画批評「ビタースウィート」85点(100点満点中)

    『ビタースウィート』85点(100点満点中) 17歳の純粋さに感動できる、青春ドラマの傑作 性格も家庭環境も全く違う、二人の少女を主人公に、ティーンエイジャーの心を瑞々しく描いたドイツ製青春映画。 監督は、相当な数のティーンたちにリサーチをしたそうで、作は細かい部分までとてもリアルに“今のドイツ少女”たちを表現している作品といえる。製作側が、自身の10代の頃の経験だけに頼らずに描いた点がうまく作用しており、メインターゲットの20~30歳のみならず、当の10代の少女たちがみても、納得できる内容になっているのではないか。 ちなみに、映画の冒頭で、女の子二人が男子部員たちのシャワーシーンを覗く場面があるが、こんな事ホントにするもんかねぇ、と思った私は、ドイツの高校にいっている知り合いに早速聞いてみた。すると彼女いわく、「リアルだ。充分あり得る」だそうである。そう考えてみると、男の子のお尻ばっか

  • 超映画批評「レボリューション6」80点(100点満点中)

    『レボリューション6』80点(100点満点中) いつしか道を外れてしまった者たちを勇気づけてくれる感動のドラマ 落ちぶれた左翼運動家たちの、現実と再生を描いたドイツ製ドラマ。 若かりしころ、市民運動や反権力運動に参加して、今は完全に経済社会の負け組となった主人公の二人組。彼らが、仲間たちと15年前にしかけた爆弾が、今ごろになって爆発して大騒ぎになる。慌てて、音信不通だった仲間たちと久しぶりの再会をはたすと、みなは全く違った人生を歩んでいた、……というところから物語は始まる。 『レボリューション6』は、非常にリアルなドラマだ。勝ち組、負け組の落差がハッキリしてきた現在、この作品が描くテーマは非常に現代的だ。主人公たちのように、安定した人生のレールから一度でも外れて、苦労した経験のある人ならば、彼らの辛苦は身にしみて理解、共感出来るはずだ。 特に、敗者復活が難しい日の会社社会では、1度でも就

  • 超映画批評「アダプテーション」70点(100点満点中)

    『アダプテーション』70点(100点満点中) ニコラス・ケイジがハゲハゲ言うたびに、笑っていいんだか悪いんだか微妙に迷う 『マルコヴィッチの穴』の監督&脚家コンビと、ニコラス・ケイジ(『ウィンド・トーカーズ』)の一人二役主演で送る、奇想天外な構成のドラマ。実在のの脚化を依頼されたが、上手く出来ずに悩んでいるうちに、ヘンな事件に巻き込まれる実在の脚家の話。 主人公のチャーリー・カウフマン(N・ケイジが演じる)をはじめ、実在の人物がぞろぞろ実名で登場する。物語は、現実とフィクションの入れ子構造になっており、この2つが交互に展開するプロットは、非常に凝っている。こんなストーリーを思い付く、カウフマンの頭の中を1度見てみたい。さすが、ハリウッドで当代一の脚家といわれるだけのことはある。 作には、『蘭に魅せられた男』という原作があるのだが、タイトル(アダプテーション=脚色)の名の通り、映

  • 超映画批評「28日後...」70点(100点満点中)

    『28日後...』70点(100点満点中) よく出来た人類滅亡系ホラー映画国イギリスで大ヒットした、終末ホラー。……といっても、明確にジャンル分けしにくい内容で、戦争映画SFの要素も含む、ユニークな作品である。 ただ、純粋な人類滅亡系ホラーとしてみても、充分に面白い。シリアスなので、見ていて気が抜けないのである。描写もリアル志向だから、男の局部もノーカットで出るし、目玉を突き刺す場面もそのままモロに写す。追いかけてくるゾンビ役は、陸上選手が演じてるから脚が早いし、兵士役の役者たちは、皆1週間、物の新兵キャンプに参加して、銃の扱いや軍人としての立ち居振舞いを勉強している。 つまり、決してノー天気に作ったわけではない、性根の座った映画なのである。こういう映画は、たとえ素人の観客が見ても、「なにか違うな」とわかるものだ。 とはいえ『28日後...』は、決してハリウッド映画のように贅沢な

  • 超映画批評「HERO/英雄」80点(100点満点中)

    『HERO/英雄』80点(100点満点中) 深いテーマを恐ろしくリアルに描いた、稀有な娯楽映画 ジェット・リー主演の、ワイヤーワーク満載のアクション映画。 ……といわれて想像するような、お気楽映画とは実は程遠い。『HERO/英雄』は、その見た目の軽さとは裏腹に、実に奥の深い映画である。人間の質を鋭く見ぬき、深く理解した上で描いており、私は大変感心した。 物語の展開は、ジェット・リーが大王へ、敵の凄腕暗殺者を倒したときの武勇伝を報告するという形を取っており、その回想シーンがイコールアクションシーンとなっている。そして、話が進むごとに、新事実が明らかになり、それによって回想シーンも微妙に姿を変えていくという、黒沢明の『羅生門』スタイルである。 だから、暗殺者とJ・リーとのバトルシーンはそれぞれが単発だ。そして、それらはジェット・リー自身が身体を張った見事なアクションや、ワイヤーワーク、水滴や

  • 超映画批評「キリクと魔女」90点(100点満点中)

    『キリクと魔女』90点(100点満点中) アフリカの魅力が詰まったエンターテイメントの傑作 国のフランスではアニメーション映画史上、最高のヒットを記録したという、アフリカを舞台にしたアニメ。アフリカをよく知る監督が、アフリカを舞台に、アフリカの赤ちゃんを主人公に描く、教訓的な話である。 ズバリいうと、『キリクと魔女』は超1級のエンターテイメントである。こんなに面白くて、心に残るアニメーション作品は、久しぶりに見た。 アニメと言っても、ディズニーの優雅なフルアニメーションorCGアニメーションや、いわゆるジャパニメーションともまったく違う。わかりやすく言えば、動く絵芝居といった素朴な味わいである。絵柄も独特で、インパクトが強い。だが、それになれる頃には、このアフリカの雰囲気溢れる傑作に、多くの方がどっぷりとはまっている事だろう。 主人公のキリクは、映画史上最年少のヒーローでもある。何しろ、

  • 超映画批評「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」80点(100点満点中)

    『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』80点(100点満点中) 一級の娯楽サスペンスに大満足 製作にニコラス・ケイジが参加した、死刑制度問題を題材にした社会派サスペンス。……とはいっても、難しい話や堅苦しい雰囲気はまったくない。1級の娯楽作品として成立している、万人向けの今週のイチオシ映画である。131分の長い上映時間をまったく感じさせず、すべてのシーンが面白い。気合のはいった力作であり、私は強くオススメする。 哲学科の大学教授が書いたというこの脚は、まさに2時間の映画のために書き下ろされたもの。だから、複雑で長大な小説をムリヤリ映画化したときのような無理がない。ストーリー展開に無駄が無く、見ていて飽きることがない。結末の衝撃も、凄いものがある。 主演の、冤罪を主張する死刑囚はケビン・スペーシーが演じる。『ユージュアル・サスペクツ』を見た方なら、きっと最初から警戒心を抱きながら彼の行動を見て

  • 超映画批評「えびボクサー」90点(100点満点中)

    『えびボクサー』90点(100点満点中) 落ちこんでいる人必見の、弱者に対する応援歌 巨大えびをボクサーに育て、一攫千金を狙う中年男の話。TVドラマの中で取りあげられるなど、話題のイギリス映画である。動物愛護の観点から、日以外ではほとんど上映されないそうだ。 「えびボクサー」などと聞けば、「いったいそれはなんだ?」と、内容をまったく想像できないのが普通の感覚であろう。私も、鑑賞前はなるべく予備知識を入れずに見るタイプなので、これがいったいどんな映画なのか、さっぱりわからない状況で見た。 結果からいえば、『えびボクサー』は、『フル・モンティ』のような、弱者への応援歌であった。イギリス労働者階級の、さえない頑固オヤジが主人公で、妙に素直な気のいい若者と、H大好きな、浮気もののちょっと頭の弱いそのGFを引き連れ、巨大えびを使って、なんとか一旗あげようと奮闘する物語である。人間味溢れる、憎めない

  • 超映画批評「地獄甲子園」80点(100点満点中)

    『地獄甲子園』80点(100点満点中) まさに漫☆画太郎の世界だ! カルト的人気を誇る漫画家、漫☆画太郎の漫画を初めて映画化した作品。87分の長編と、8分間の短編『ラーメンバカ一代』が同時上映となる。 早速だが、おすすめは8分間の短編のほうである。私はこの原作も読んだことがあるが、ここまで見事に映像化出来るとは夢にも思っていなかった。この監督(新人の山口雄大氏)は、この漫画家の魅力をよほど知り尽くしており、どうやれば面白く映画化出来るか、考え尽くしたに違いない。 もう、爆笑しっぱなしで、私は腹が痛くなった。マスコミ試写室というものは、えてして年齢層が高いもので、こうした若者向けのマニアックなギャグ作品は受けないだろうと思っていたが、隣に座っていた某ベテラン評論家なども、吹き出していたくらいだから、相当な破壊力である。 だいたい、8分間の作品だから、エンドロールも一瞬で終わる。つまり、笑いが

  • 超映画批評「トレジャー・プラネット」80点(100点満点中)

    『トレジャー・プラネット』80点(100点満点中) 子供も大人も楽しめる、これぞ娯楽映画の見 冒険小説の古典『宝島』を原作にした、ディズニー・アニメーション。アカデミー賞の長編アニメ部門を『千と千尋の神隠し』と争った。 『トレジャー・プラネット』は、まさにディズニー、まさにハリウッド、という映画である。一切奇をてらわず、ストレートなストーリーで真っ向勝負、そこがいい。 『宝島』が原作とはいえ、舞台は宇宙。現代的に、設定を少々変更してあるのがミソである。そのアイデアのおかげで、空を飛ぶスノボーや重厚な宇宙船など、絵的に派手な見せ場を作ることが可能になった。話によると、このアイデア自体は17年前に考えられたが、最近技術的にようやく表現可能になったので、作の製作が始まったのだという。 アクションシーンはスピード感満点で、カメラも主人公の目線。だから、まるでディズニーランドのアトラクションに乗

  • 超映画批評「夏休みのレモネード」80点(100点満点中)

    『夏休みのレモネード』80点(100点満点中) さすがは12000から選ばれた脚だ ベン・アフレック&マット・デイモンが、『グッドウィルハンティング』の脚を、自分たち主演で売りこみ、アメリカンドリームを実現したというのは有名な話である。そんな彼らが、自分たちに続く新人を探すための企画で集めた1万2000の脚の中から、グランプリに選んだ脚映画化した感動作が作である。 主人公である8歳の少年の視点で、死と宗教の問題をさわやかに描いている。ユダヤ教とカトリックという、大人だったら非常にデリケートに扱う、大きな宗教の違いを、彼は子供ならではの純粋さ、大胆さで乗り越えてゆく。 主人公の少年は、白血病で余命がわずかという年下の親友のために、10個の課題を一つずつ親友にチャレンジさせる。無事全種目をクリヤーすると、親友は安心して天国に行けるという設定なのだ。 そして、9つをクリヤーした時

  • 超映画批評「アバウト・シュミット」80点(100点満点中)

    『アバウト・シュミット』80点(100点満点中) 最後の十秒にこの映画の魅力の全てがある! アカデミー賞俳優ジャック・ニコルソン主演の感動ドラマ。 主人公は、定年退職を迎えた初老の男で、半生を振りかえり、自分の人生は平凡だが、そこそこ幸せだったと思いこんでいる。 ところが、突然が死亡し、しかも遺品を整理していたら自分の親友と浮気していやがったことが分かって、その思いは吹っ飛ぶ。 さらに、仕事ひとすじだったために、ろくに家事も出来ない彼の生活は荒れ放題。趣味も無いので、仕事を辞めたら全くやる事がおもいつかない。 つまり、人生の終盤で、メッキが一気に剥げ落ちた、あわれな男なのである。これは、特に日人のオジサンたちにとっては、他人事ではあるまい。熟年離婚が社会問題になっている今、こうした主人公の気持ちがわかる人は、相当な数いるはずだ。 J・ニコルソンの演技が見事である。彼は、ラスト十秒のある

  • 超映画批評「NARC ナーク」80点(100点満点中)

    『NARC ナーク』80点(100点満点中) 二転三転ストーリーを楽しめる良質ミステリ トム・クルーズが製作総指揮にあたった(出演はしていない)、刑事ドラマ。完成した作を鑑賞したトム・クルーズは大満足し、『M:I-3』(04年夏公開)の監督に作の監督ジョー・カーナハンを大抜擢したという話もある。 コレは非常に面白い。トム・クルーズは最近、そのネームバリューを持って、出演もしていない新作の宣伝に良く利用されるスターだが(たとえば、「トム・クルーズがリメイク権を買った」とか)、確かに彼は、脚を見る目があるといっていいだろう。 この『NARC ナーク』も、彼が脚に惚れこみ、製作を買って出たという作品だが、確かに非常に見応えのある、素晴らしいストーリーとプロットを持った、重厚な作品である。 といっても、堅苦しさは全くない。謎解き刑事ドラマとして、ごく普通の人達が、楽しく見れる映画である。

  • 超映画批評「愛してる、愛してない…」90点(100点満点中)

    『愛してる、愛してない…』90点(100点満点中) 衝撃的で面白い、GW最大のオススメ 『アメリ』で、日でも大人気になった女優オドレイ・トトゥの主演作。これは実に面白い! お洒落で、映像もきれいで、実にフランス映画らしい、素敵な恋愛映画だと私は最初見ていて思った。 ところがどっこい、映画の中盤で信じ難い場面が出てくる。レティシア・コロンバニ監督は、わずか28歳で、実際私も人をみたが、パリを普通に歩いていそうな普通のフランス娘って感じの人で、まさかこんな凄い事をやる人物には見えなかった。 その記者会見で、私はこのシーンについて彼女に質問したのだが、そこでは大して面白い答えは頂けなかった。もしかして天然? っていう予感がするのだが、そのわりにはかなり計算し尽くされたプロットで、非常に見応えがある。 オドレイは、アメリのときのようにキュートで、前半は彼女のあの笑顔のクローズアップばっかりが多

    • 2007年2月7日