Aさんを自殺へと追い込んだ常軌を逸した長時間労働。いったいなぜ、見過ごされてしまったのでしょうか。背後には、責任の所在をあいまいにする契約形態がありました。それが「請負労働」です。 Aさんが三幸設備に雇われて働く場合は「雇用契約」となり、労働に伴う監督責任は三幸設備が負うことになります。しかし、今回両者が結んでいたのは「請負契約」。三幸設備がAさん個人に業務を委託し、その成果に対して報酬を支払うというものです。つまり、「どんな働き方をしようと、三幸設備に監督責任はない」という契約だったのです。 しかし、実態は本来の請負契約とはかけ離れたものだったとして、家族はAさんの日報などを基に、労働基準監督署の判断を仰ぎました。そして去年6月、労基署の調査結果が出ました。 『本件を業務上の災害であると考える』 労基署は、自殺直前のひと月で約140時間の時間外労働があったと認定。過労により気分障害を発症