→紀伊國屋書店で購入 「「考える」読書を手離さないために」 「電子書籍」をめぐる議論は過熱している。しかし、肝心の「読書」の内実はどうなっていくのか。そこをきちんと考えないと、何のための「電子化」かわからなくなりそうだ。 本書『脳を創る読書―なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか』は、小著ながら「読書」の意味をあらためて考えさせてくれた。著者、酒井邦嘉氏は『言語の脳科学』(中公新書)などの著作が高く評価されている、言語学と脳科学を結ぶ新しい分野の代表的研究者だ。この「言語脳科学」から「読書」を見るというのが、本書のユニークな視点だ。加えて、大変な読書家である酒井氏自身の「紙の本の一愛好家としての意見や思想」も味読する価値がある。 第一章「読書は脳の想像力を高める」は、さらりと平易に書かれているが、後の議論の重要な手がかりとなる。入力情報としては、活字は音声や映像に比べて圧倒的に情報量が少ない