判官びいきという言葉がある。衆知のように夭折した源義経を自然にかばう日本人特有の心情である。確かに日本人は、義経のように悲劇性をはらんだ人物に強く惹かれる傾向がある。 私自身、スポーツを観ていても、いつの間にか弱い者を応援している自分に気付くことがある。この「判官びいき」を、もう少し厳密に定義すれば、本来才能があり余るほどありながら、その才能が開花しないままに終わってしまったような人物を、自然にかばってしまう日本人特有の優しい心情とでも言えるだろうか。 広辞苑には「源義経を薄命な英雄として愛惜し同情すること。転じて弱者に対する第三者の同情やひいき」とある。まさに判官びいきは、日本人の心の中にある優しい心情であり、一種の美意識といっても過言ではない。 判官びいきをされる人間というものは、日本の歴史の中でも、ほんの数人しかいない。弱いからすぐ日本人がその人物をヒーローに祭り上げるかというとそう