→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 16世紀にヨーロッパ世界の耳目を集めたマルク諸島(モルッカ諸島、香料諸島)の中心であるテルナテ島は、周囲70キロほどの円錐型の火山島で、現在約10万の住民のほとんどは海岸沿いの集落に居住している。火山はときおり噴火し、火山灰を降らせ、その山頂は雲で覆われていることが多い。その雲の下になる中腹に、フォラマディアヒという集落がある。はじめてこの集落を訪れたとき、歴史の謎がいろいろ解けた。集落の入り口から2本の道が山に向かい、それぞれ両側の石垣の上に家が建っていた。これがかつての「山の都」だと思った。現在、海岸の市場の上に王宮があり、博物館になっている。歴史書を読んでいると、ヨーロッパ人が何度も「都をおとした」という記述にお目にかかる。しか