森 永輔 日経ビジネス副編集長 早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。 この著者の記事を見る
東芝の第三者委員会が調査報告書を公表しました。一読した印象は。 郷原:今回の東芝問題の本質は、会計処理が適正だったかどうかです。会計監査人、つまり新日本有限責任監査法人がどんなチェック機能を果たし、東芝の経営陣がどう対応したのかが最大の焦点であるべきです。ところが報告書では、一番大事なところを「スルー」しています。 東芝については、経営トップの確執や社内風土など、ガバナンス(企業統治)の問題が騒がれています。しかし、焦点はそこではありません。経営トップが過大な利益目標を「必達」だと押しつけて、現場が何かをしたとしても、最終的に監査法人がきちんとチェックできていれば、会計問題は起きないはずです。 この点をしっかり詰められなかったことが、報告書の最大の問題です。監査法人との関係性が明確にならない限り、東芝経営陣に「不正の意図」があったかどうかが認定できないからです。 「だます」か「見逃してもら
スティーブ・ジョブズの功績ばかりに注目されることが多いが、私が日本語版の序文を記した『ジョナサン・アイブ』でも紹介されているとおり、アップルのデザインチームを率いるジョナサン・アイブの貢献は非常に大きい。今回は、ジョナサン・アイブとスティーブ・ジョブズの二人が、どのようにアップルの企業体質をデザイン主導へと大きく転換したのかを紹介しよう。 デザイン思考の重要性に気づいても、なかなか企業やチームの体制を変えられずにいる人たちのヒントになれば幸いだ。アイブの洗練さを追求するデザインへの姿勢を書いた前回の記事とも少しかぶるが、まずはジョブズとアイブの最初の共同作業、初代iMacの話からだ。 真のデザイン経営ができたスティーブ・ジョブズ 初代iMac発表直後の1998年、私はアップル社内でもっとも厚い秘密のベールに包まれたアップル社工業デザイン部門(IDg)を訪問して、ジョナサン・アイブにインタビ
グローバル化で企業の競争力が高まる中、企業は、生産性の向上、人件費の抑制、組織の効率化、選択と集中など、生き残りをかけて取り組んでいる。 「集合体をつくって生活する生き物たちは、組織の効率を最大にするような進化をしていない」と語る長谷川氏。集団の利益を高めるために必要なことは? 生き残るために企業はどうあるべきか?アリの生態から学ぶことがあるのではないか? 「人より“数字”が偉くなった社会」の問題点を、度々指摘してきた私、河合薫が、働かないアリの意義を伺った前回に続き、今回は、組織の効率化と生産性について、長谷川氏にお話を伺います。 (1回目はこちら) 河合:アリの社会って、働かないアリに、「お前、いつも働いてないじゃないか!」と攻撃するようなアリはいるんですかね。 長谷川:そういうことはないです。働きアリって基本的には全員女王アリの娘なので、女王が子孫をたくさん残してくれればいいわけです
家を買うべきか、借り続けるべきかは若手社員にとって永遠の命題だ。仕事のことならともかく、こと持ち家問題に関しては、先輩に相談しても明快な答えは得られない。既に自宅を購入した“持ち家派”は「家賃を払い続けても賃貸住宅は未来永劫、他人の物。同じくらいの金額ならローンを払って自分の資産にした方がよい」と主張する。一方、“賃貸派”は「先が見えない中でローンを組むなんてとんでもない」と持ち家戦略のリスクを煽る。両者の主張は平行線を辿るばかりで、永遠に決着が付きそうにない。 だが、そんな中、「サラリーマンは自宅を買ってはいけない」と明確に主張するコンサルタント・不動産投資家がいる。その根拠と、賃貸派のアキレス腱である老後の暮らしについて対策を聞いた。 (聞き手は鈴木 信行) 著書「サラリーマンは自宅を買うな」で、会社員がローンを組んで自宅を所有するリスクを主張されています。今ここに、まさに自宅を買わん
先日、飲み会の席で「…だって世の中、『飛行機がなぜ飛ぶか』ということすら、本当は分かっていないんですから」という声が聞こえてきた。読者の多くの方もきっと、同じ話を耳にしたことがあると思う。 「常識と思っていることは、実は単なる思いこみだ」という文脈か、「科学なんてたいしたことないじゃないか」という話か、そこまでは分からなかったが、声にはちょっと嬉しそうな響きがあった。 もちろん科学は宗教ではない(こちら)。「信じる」ことが基本姿勢の宗教に対して、科学のそれは「疑う」ことだ。リンク先の記事の通り、科学を宗教的なものと誤解しないためにも、「本当はどうなんだ?」と疑う姿勢は大切だ。その一方で、「結局、科学といっても本当は何も分かってないんだよ」という見方は、シニカルな態度にもつながっていきそうでなんとなく違和感がある。 それはさておき、高速で空を飛び、多くの人命を載せる航空機がなぜ飛ぶか、本当に
女子高生の実験論文が海外の化学分野の学術雑誌に掲載されたり、女性科学者が万能細胞作製で注目されたりするなど、近年理系分野での日本人女性の活躍がメディアを賑わしている。 しかしながら、日本では理系分野に進学する女子生徒はいまだ少数派だ。政府は理系に進学する女子高生を増やそうと様々な取り組みをしている。例えば、科学技術振興機構は、女子生徒の理系の専門分野への関心を高めることを目的とした「女子中高校生の理系進路選択支援プログラム」を運営し、大学で女子中高生のためのイベントを開き、ロールモデルとなる女性研究者を紹介している。 理系の分野へ進学するためには数学の学力が必要であるが、経済協力開発機構(OECD)が2012年に日本を含む65カ国で51万人の15歳を対象にした学力診断テストでは、日本の15歳の女子生徒の数学の学力は男子生徒と比べると低いことが明らかになった。 日本の生徒達の数学の平均点数は
高層マンションでは秀才が育ちにくい。「断捨離」してきれいに片づいた家は子供の意欲を下げる――。2500人以上を難関中学に合格させたプロ家庭教師の西村則康氏は、数多くの家庭を見てきた経験から、意外な住環境が子供の学力を左右すると指摘する。さらに、“正しく”受験勉強をすれば、大人になってからもずっと使える思考習慣が獲得でき、燃え尽き症候群にも決して陥らないという。子供だけでなく大人にも役立つ能力開発の大前提について聞いた。 西村先生はプロ家庭教師として、これまでに2500人以上の子供を難関中学に合格させてこられたそうですが、家庭の中に入り込んでいく家庭教師だからこそ、家を見ると分かることがいろいろあるそうですね。 西村:はい、家庭環境を見て、子供にちょっと話をさせれば、例えば高校になったらこの子はどのくらいの学力になっているかという先のことも何となく分かりますね。 西村先生は近著『頭のいい子の
空前の女性活用ブームが起こっている。 2013年、安倍政権は今後の成長戦略の軸に女性の活用を掲げた。2020年までに、社会のあらゆる分野において指導的地位に占める女性の割合を30%程度まで引き上げる。そのためにはまず、全上場企業に対して、役員に1人は女性を登用すること。また今後は上場企業を対象に、管理職や役員に占める女性の割合を調査し、各企業の女性登用状況を公開すると公表している。 これを受けて、経済界は突如、女性社員の昇格、昇進に乗り出した。「女性初」の役員を作る企業が増えたかと思えば、自社で立てた女性管理職比率の数値目標を公表する企業も相次ぐ。 政府主導の女性活用ブームは、今後、職場にどんな影響を与えるのだろうか。日経ビジネス8月26日号「女性昇進バブル」では、現在実際の職場で巻き起こる混乱と、今後量産される女性管理職、女性役員が職場に与える影響を予測。あるべき「女性活用」のためにすべ
「君ねぇ、知ってるか。最近は包丁やまな板が家にないっていう人だって多いんだぞ」 大手スーパー、マルエツの上田真社長と先日話していたら、そんなことを教えてくれた。最近、東京都内などの売り場を訪れると、やたらと目立つようになってきた「カット野菜」のコーナーについて、話が及んだ時のことだ。 カット野菜とは、調理の際に細かく切らなくて済むように、あらかじめ適当な大きさに刻んでパックで売っている生鮮野菜のこと。忙しい共働き世帯や、調理が面倒な単身者の人気を集めているとされる。 加工の手間がかかっている分、重量当たりの価格で比較すれば、そのままの生鮮野菜を購入するよりも断然割高だが、「丸ごと買っても使いきれない」ときがあることを考えると、表面的な価格差よりは経済的な負担感はないのかもしれない。 そんなカット野菜が少なくとも都市部で売れているのは、売り場を見れば一目瞭然だ。 農畜産業振興機構によると、カ
日本のメーカーは、ここ数カ月間でアベノミクスの潮流に乗り、全体としてはやや回復基調をたどってきている。しかし個別に見れば、その多くの企業はいまだに苦境から脱したとは言い難い状況であろう。また、2010年にはGDPが世界第三位へ転落、2011年には世界の特許出願件数も第三位となるなど、近年の日本の相対的地位の低下は顕著である《注》。この傾向は、新興国の目ざましい成長や国内の人口減少予測に鑑みれば、打開するのは至難の業と言える。 競争力の源は人財、しかし流出が絶えない ただ、確実に言えることがある。それは、強い競争力を持つには優秀な人財の育成、確保に、もっと真剣に取り組まなければならないということである。武田信玄の「人は城、人は石垣…」という言葉があるように、組織にとって、人財は何よりも重要である。その質を一定以上に保たない限り、その組織に未来はない。 思えば、かつて日本には、明治維新や昭和の
早速ですが、『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』(講談社α新書)。いやーまいったな、と思いました。最初は単純な専業主婦攻撃の本かと思いましたが、読んでみるとそうじゃない。日本社会にたくさん存在する、あるタイプの夫婦・親子関係が、現代社会の様々な病理を生み出しているという指摘ですね。 読んでいて、笑いと恐怖が交互にこみ上げてきたんですが、たぶん女性よりは男性、それもいわゆる「高スペック」男性にとっては、恐ろしい本でしょうね。 深尾:ある男性は、読んでいてお腹を下してしまったそうです。ちょうど「ママ友地獄」について書いてある章だったらしいですが。 タガメ女:田んぼに生息してカエルを捕獲するタガメのごとく、収入や社会的地位のある男性を捕獲し、「幸せな家庭」というタガにがっちりとはめて自由を奪い、リソースを吸い尽くす女性。夫だけではなく子供、ママ友など周囲の人間関係をもタガによって呪縛する。搾取
2013年2月14日、東京・ホテルオークラの「平安の間」で「理化学研究所と産業界の交流会」が開催された。理化学研究所(理研)が用意した講演は3本。その1つが「113番新元素の探索」だった。 演者は、昨年の10月23日に当コラムで報告をした森田浩介さん(仁科加速器研究センター、森田超重元素研究室、准主任研究員)だ。森田さんの講演を通じて、産業界の人々は「日本力」への大いなる自信や誇りを抱いたに違いない。その森田さんを理化学研究所(埼玉県和光市)に再訪した。 新元素を創り出したことは科学分野での「日本力」を物語るが、一般には難解な世界だ。そこで理研・広報室は、お堅い基礎研究所とは思えない、専門外の人でも理解できる大胆な企画を立てた。森田さんの「生い立ちから発見に至るまでの道のりを紹介する」マンガ『113 新元素発見に至る20年の戦い』の公開だ(ストーリーは「113番目の元素」合成の最後の「決め
ライフネット生命保険が営業を開始して約1年が過ぎた2009年夏のことです。20代の社員に突然こう言われました。「出口さん、この日、1時間ほど時間を空けておいてください」。いったい何の用だろう。と思いつつ、私は、「いいですよ」と答えました。 前日、私は彼に聞きました。 「明日、時間は取ってあるけど、何をするんだっけ」 その若い社員はこう言いました。 「インターネットでのPR企画のため、二子玉川へ行って、多摩川の河川敷に降りてください」 「でえ、何をするんだい?」 「まずですね。今回の企画を考えてくれたウェブマガジン、デイリーポータルZのウェブマスター林雄司さんが、死亡保険に加入しよう、と河川敷に待ち受けています」 デイリーポータルZ? 何だ、それ? ヒーローロボット? 「それで、ですね。この林さんが、3枚の紙皿にそれぞれ、1,000万円、2,000万円、3,000万円と、死亡時の受取金額を書
前3回まで、岸勇希さんが展開される「コミュニケーション・デザイン」の手法をうかがってきました。そんな岸さんには、失敗例も聞いてみたいのですが。 岸:こんな言い方をするのは、謙虚じゃなく聞こえると思いますが、キャンペーンに限定すれば致命的な失敗は、ほぼないと思っています。競合プレゼンでは、少なくともここ3年は無敗です。最近正直、負け方が分からないんです。 さらっと明るく強気に。 岸 勇希(きし・ゆうき):電通CDCクリエーティブ・ディレクター/次世代コミュニケーション開発部専任部長。東京大学講師(2011-2012)。 1977年、名古屋市生まれ。東海大学海洋学部水産学科卒業。早稲田大学大学院国際情報通信研究科修了。2004年、電通に入社。中部支社雑誌部、メディア・マーケティング局を経て、06年10月より東京本社インタラクティブ・コミュニケーション局クリエーティブ室へ。08年より現職。 広告
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 2011年3月11日14時20分。筆者を乗せたトルコ航空TR051便は、ほぼ定時に成田国際空港を離陸した。大地が大きく揺れたのはその僅か27分後であった。飛行中、日本の情報は伝えられず、筆者が東日本で大きな地震が起きたことを知ったのはイスタンブールのホテルのフロントスタッフの言葉からだった。 不安に駆られる気持ちを抑えつつ、部屋の無線LANの回線にPCをつなぐ。スクリーン上に映し出された光景は眼を覆うばかりの惨状であった。 日本の安心安全が吹き飛んだ 以来、刻々と更新されるネット情報を追い、テレビでBBCやCNNのニュースを見続ける日が数日間続いた。最も大きな衝撃を受けたのは、福島第一原発1号機で水素爆発が起きた光景を海外メディア経由で見せら
英米人は誉め言葉の中に微妙に本音をにじませて伝えます。この方法を体得することは彼らと対等にやり合うのに不可欠です。しかし、最初はなかなかできません。第1ステップとして、英米人流の誉め方を学びましょう。これはgoodさえ使えれば、誰でもすぐにできるようになります。 英米人は建前の世界 日本人は本音を言わない、英米人は単刀直入に話す、と言われています。この指摘は外国人がしたものです。日本人がこう思うはずはありません。こちらは外国人が話すちんぷんかんぷんな英語を聞かされるわけですから、「ああ、外人って単刀直入だなあ」と思うことはないからです。 この「日本人は本音を言わない、英米人は単刀直入に話す」という指摘は正しいでしょうか。われわれは検証することもなく、この指摘を真に受けていないでしょうか。ぼくの経験では真実はこの逆です。日本人は本音をよく言います。 例えば、顔馴染みの寿司屋に入って、「久しぶ
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