たとえば、派遣切りに合った若者に「きみは努力したのか」「もっと能力を磨け」と説教を垂れるオヤジがいる。シングルマザーが幼い子を抱えて働けど働けど貧しさから脱け出せず、生活保護を申請すると「あなたと同じ境遇でもガンバッテル人がいるじゃないの」「家族に助けてもらいなさい」と追い返す福祉事務所の職員がいる。 わたし自身、このような「もっともらしい」台詞を口にしたことがないと言えば嘘になる。だが、本書を手にとって、「もっともらしい」反応が、どれだけ貧困の構造を見えなくするか、また貧困を食い物にするシステムを蔓延させているかを再認識させられた。ワーキングプアを「本人のせい」と決めつけ、公共の問題から排除し続ければ、社会は間違いなく崩れていく。 本書は、その排除の空気に強烈な「ノー」を突きつけた闘争の書として読める。 〈よくフリーターに説教するオヤジなどがいるが、そういう人の前では、バブル期の就職内定