■ 静かな紅葉の湖を訪ねる 紅葉の季節ながら平日の本栖湖は静けさの中にあった。 もうかれこれ20年ほど前、ぼくはこの本栖湖にささやかな夢を描いた時期がある。60代から70代の自分が本栖湖で孤独という無限の自由ににひたりながら過ごす日々のかたちだった。 ぼくのキャンプという野遊びは、この美しい湖とともにあった。すぐとなりの村営の素朴なキャンプ場が、ぼくのいちばん古いホームグランドである。松林のなかの、伝統的な日本のキャンプ場であり、はるか昔、アウトドア誌で人気キャンプ場のトップをとったこともあった。 いまでは大きな駐車場ができたりして、昔とはすっかり様変わりしてしまった。それでもキャンプ場は、良くも悪くも素朴なままで残っている。 30代のぼくにカヌーの面白さを教えてくれたのは、ともにキャンプを楽しんだ若い友人たちだった。お盆休みで混雑する本栖湖キャンプ場で彼らと何日かを過ごし、真夏の日を一艘